賃貸住宅なのになぜ自治会が存在するのか

「私が住んでいるのはJKK系列です。ここの家賃設定は年収層によって5段階に分かれていました。入居時の私はたぶん真ん中くらいのランクだったと思います。広さは約85平方メートルで、入居時の家賃は13万円くらいでしたね。

JKKは、毎年少しずつ家賃が上がっていき、最終的に上限に達する仕組みです。私はもう30年住んでいるので、上限に達しています。その金額はここでは言えないけど、港区で、この広さで、新橋まで15分程度ということを考えると、かなり安い家賃ですね」(安田さん)

安田功さん。後ろに建っているのが現在住んでいる賃貸マンション
筆者撮影
安田功さん。後ろに建っているのが現在住んでいる賃貸マンション

先に書いたとおり、安田さんはお台場合同自治会の会長だ。2013年に設立された組織だが、作るにあたってはお台場ならではの苦労があったという。

「そもそも賃貸住宅には自治会がないことが普通です。ただし都営住宅は、その限りではない。管理人も管理事務所も置かず、日常の掃除や電球の取り替えのような細かいことは住民でやるのが前提です。だから、都営の棟は最初から自治会への加入が入居ルールに組み込まれています」(安田さん)

一方、JKKやURはその母体が管理する体制だから、自治会はなくてもよい。むしろなくて当然、という空気が強かった。

かつてお台場を彩った名所たち

「そもそも賃貸だから、自分の持ち物ではないわけです。だから、地域運営に関わろうという意識は、どちらかというと生まれにくい。ただし、そうは言っても2011年の震災により自然災害に対する地域住民全体の危機意識が芽生えたことをきっかけに、自治会が作られるようになりました。でも、棟によっては自治会を持たないところもあった。そうした棟の住民をまとめる形で作ったのが『お台場合同自治会』です」

ただし、立ち上げ作業はかなり難航した。

「実際、賃貸マンションに入ってくる人の中には、近所づきあいやコミュニティがわずらわしいからこそ賃貸を選んでいる人も多いんですよ。自治会を立ち上げるにあたって、一軒一軒ドアをノックしてその必要性をお話ししたんですけど、“そういうのが嫌だから賃貸を選んでいるんだ”と追い返されることも、かなりありました」(安田さん)

こうした話を聞いている最中に、会話がふとパレットタウンやヴィーナスフォート、大江戸温泉物語の方向に流れた。

お台場にはかつて、「パレットタウン」という複合商業施設があった。夜になれば、様々なイルミネーションで照らしだされる大観覧車が、ランドマークになっていた。

ここには、トヨタ自動車の巨大ショールーム「MEGA WEB」、天井に夜空や夕暮れが映し出される全天候型のショッピングモール「ヴィーナスフォート」、ライブハウスの「Zepp Tokyo」などがあったが、2022年8月までに順次閉館した。

その後、同地で没入体験テーマパークの「イマーシブ・フォート東京」が開業したが、ここも、2026年2月に閉業した。

閉業したイマーシブ・フォート東京
筆者撮影
閉業したイマーシブ・フォート東京
閉業したイマーシブ・フォート東京
筆者撮影
閉業したイマーシブ・フォート東京