まるで「東京の実験場」のような街

時代の移り変わりによるニーズの変化や、コロナ禍以降の営業不振が、閉鎖の理由だと思われがちだが、実際はそれだけではない事情がある。安田さんは次のように説明する。

「お台場の土地の多くは現在も東京都の持ち物です。陸の孤島のようなこの場所の有効利用を東京都はずっと考えてきたんですね。それが、パレットタウンなどの商業施設の誘致です。ただ、地面の持ち主は東京都のまま、多くの商業施設は定期借地権で土地を借り、商売をしているわけです」(安田さん)

「定期借地権」なので、期間はあらかじめ設定されている。パレットタウンに関しては、当初10年の期間限定だったようだが、想定以上に人気を博したため、契約の延長が続いていた。

「様々な理由はあるのでしょうが、とにかく今回は更新はなく、2026年に借地権の期限が切れ、今後はまた別のコンセプトでまちづくりが進められることになった。お台場という土地は、住んでいる人も商業施設も、賃貸なんです。街全体がそうしたイメージなんですよね」(安田さん)

賃貸だから出入りが激しく、常に街の様子が変わっている。今後も変わり続けるだろうと、安田さんは言う。どんな変化が正解なのか、誰にもわからない。「だから、お台場って、ずっと“東京の実験場”のようなイメージなんですよね」。安田さんのこの言葉が妙に心に残った。

総工費3500億円で生まれる新たな施設

「東京の実験場ねぇ、そう言われると頷かざるをえないかもしれませんね」と語るのは「シーリアお台場三番街自治会」の会長で、元フジテレビ局員の森正行さん(77)だ。

元フジテレビ局員の森正行さん
筆者撮影
元フジテレビ局員の森正行さん

森さんはフジテレビの退職社員会「旧友会」の幹事を務めている。フジテレビ社屋内の18階にある旧友会の事務局にて話を聞いた。

「お台場は新陳代謝の盛んな街であることはその通りです。今後もここで、新しいものが生まれていくでしょう。今私が注目しているのは、SBIホールディングス(HD)がすすめる日本版『Sphere(スフィア)』の建設計画です」(森さん)

スフィアは米ラスベガスで人気のアミューズメント施設だ。半円・ドーム状の巨大建造物で、内壁外壁の全面がLEDで覆われており、これが映し出す投入映像体験が特徴だ。総工費は3500億円程度になると見込まれている。