信玄の死因は毒入りの餅というウソ

この日のクライマックスである小谷城にたどり着く前も、驚くべき場面が続いた。武田信玄(高嶋政伸)は餅を喉に詰まらせて急死。しかも、それは織田信長(小栗旬)の側が仕込んだ毒入りの握り飯を食さずに済んだ直後に、という設定だ。信玄の死因は胃癌だったという説が有力なところに、斬新な「新解釈」だった。

また、足利義昭(尾上右近)が追放されたのはいいが、義昭の二条御所が壊されるのは、それから3年ほど後のことである。ところが「小谷落城」では、信長は御所をすぐに跡形なく壊させた。それもあえて、少し前まで義昭に仕えていた明智光秀(要潤)に命じた。

ドラマの展開を劇的にするために、わかっている史実まで変更して描くのはいかがなものか。しかも、御所の建物を木筒などで打ち砕いていたが、当時は、使える建物はどこかに移築した。このような雑な破壊は当時の常識と異なる。

朝倉義景(鶴見辰吾)の最期もおかしかった。一族で重臣の朝倉景鏡かげあきら(池内万作)と連れ立って賢松寺に逃れたまではいい。だが、史実では、その4日後に景鏡の裏切りに遭って切腹し、介錯した家臣2人の名までわかっている。ところが「小谷落城」では、甲冑をつけたままの義景を景鏡が後ろから刀で襲い、一振りで首を切り落としたのである。

ドラマでは「一乗谷に火を放て」と命じられた景鏡が、「一乗谷の民を守る」ために義景を殺したが、史実では、義景が腹を切ったときには、一乗谷は織田軍に放火されて灰燼と化していた。

撮影=プレジデントオンライン編集部
一乗谷朝倉氏遺跡。

浅井の寝返りは市を守るため?

だが、これらの「新解釈」はその後の展開にくらべれば、どうということはない。

小谷城の小丸を攻められて浅井久政(榎木孝明)を切腹させ、本丸にいる長政(中島歩)を落とす番になった。そこで藤吉郎(池松壮亮)と小一郎(仲野太賀)が、和睦交渉と、長政の妻で信長の妹である市(宮﨑あおい)の助命嘆願を買って出た。

いちおう浅井の残兵たちが動かないように、柴田勝家(山口馬木也)が抑えての交渉だったが、それにしても、以後は緊迫した落城の場面にそぐわないファンタジーの連続だった。

まず、小一郎が長政にかけた言葉に驚いた。「わが殿もおわかりでございます。浅井様の寝返りは、お市様をお守りするためだということを」

この時代、大名たちが戦ったのは、基本的に領国の平和を守るためで、そのためにだれと組むかを決めた。平和を守る意志がないと判断されれば、地域の国衆たちはすぐ離反し、それは大名自身の滅亡につながりかねない。そういうギリギリの判断の末に、浅井家は朝倉家を選んだのであり、「市を守るため」などという情緒が介入する余地は微塵もなかった。

写真=高野山持明院蔵/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons
浅井長政夫人(お市の方)の肖像画