外資系コンサルティングファームに学ぶ「OS」の正体

――データ分析などの専門スキルと違い、「OS」つまり物事を進めるスキルは言語化が難しい印象です。より細分化・具体化するなら、どんな表現になりそうでしょうか?

勅使川原:全てを語るととても1つの記事にはおさまらないので、今回は以前私が働いていた外資系コンサルティングファームを例にお話ししましょう。そこでは、OSに該当するものは「デリバリー力」と表現されていました。そのデリバリー力とは、以下3つのスキルで構成されていたように思います。

【デリバリー力を構成する3つのスキル】
蓋然性(がいぜんせい※)を語る力……「これを絶対にやるべき」とロジックで相手を説得する力。一般的な正論やROI(投資対効果)のメリットだけでなく、誰が反対しそうか、費用感はどうなるか、やることで現場の業務がどう変わるかまで、全方位からロジックを固める。反論は来る前につぶす「先読みのロジック」こそ、コンサルタントの真骨頂。
※……ある物事が起こりそうなことを合理的に説明できる、確実性の度合い

ウェットなコミュニケーション力……ロジックだけでは動かない人間を動かすために、公式の場の外で信頼関係を築く力。会議室では言えない本音を引き出したり、根回しで事前に地ならしをしたり、相手の警戒心をほぐしてから本題に入ったり。こうした動きは多かれ少なかれどの職種・業種もやることだが、コンサルタントが際立っているのはその徹底ぶり。必要とあれば飲み会だって何度もセッティングする。「誰と・どんな場で・何を話すか」を場当たり的にではなく、意図を持って設計する。

やり切る力……プロジェクト推進に関することなら「何でもやる」力。ロジックも信頼関係も整っているのに、プロジェクトが進まないことはある。その時「自分の役割ではない」「自分にはできない」と逃げ腰になるのではなく、ボトルネックを自ら特定して自ら取り除く。反対意見を唱える人や経営層とも直接交渉する、専門家を外から連れてくる、個別に関係者へ“ヒアリング行脚”をするなど。

【デリバリー力を構成する3つのスキル】
画像提供=MEETS CAREER by マイナビ転職

――つまり、ロジックとコミュニケーションが物事を進める原動力になっていると。

勅使川原:はい。「ロジハラ」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、コンサルタントは仕事のあらゆる局面でロジカルシンキングを求められます。これはロジックにプロジェクトのあらゆる関係者を納得させる力があるからです。

ただ、ロジックだけで人はなかなか動かない。そこで必要になるのがウェットなコミュニケーションです。

――なるほど、人と人の対話もまた、物事を進める上では大事というわけですね。コンサルタントと言えば、精緻なビジネス資料を作ることで知られます。ネットではしばしば「パワポを作る仕事」とも揶揄されますが、それも物事を動かす意図があるのでしょうか。

勅使川原:その通りです。大前提、PowerPoint(パワポ)の資料は、提案内容を可視化しディスカッションしやすくするためのツールですが、「人を動かすツール」でもあります。なぜなら、資料の質や量、提出スピードでクライアントに評価されれば、それだけで信頼貯金がたまるので。さらにパワポは、自分がその場にいなくても第三者がそれを使うことで人を動かせる、という間接効果もあります。つまり、パワポは時空を超えるのです。

「人を動かすツール」としてのパワポ資料
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この章のまとめ
● コンサルタントにとってのOSは「デリバリー力」
● ロジックと信頼関係と本人のやり切りがそろえば、物事が進む
● パワポの資料は「人を動かすツール」でもある