「打席」に入り続ければ、視座が上がる

――では、具体的にOSをどう学び、鍛えていくのかを掘り下げたいのですが、これもなかなか言語化が難しそうですよね。専門スキルを学ぶ方法は、教材や書籍などたくさんあるのですが。

勅使川原:こればかりは「仕事のなかで経験を重ねていくしかない」んですよね。逆にやっていれば、自分なりの成功パターンやOSを構成する要素も見えてくる。

もちろん、OSを鍛える過程は地味でストレスフルです。社内調整、言語化、部下のモチベーション管理などは、正解がなく、プロセスも目に見えにくい。広告の運用手法はある程度勉強すれば勝ち筋も見えてきますが、この辺りのスキルは何十時間考えても答えは出ません。体で覚えるしかないわけです。

――「体で覚える」をより具体化するとすれば、どうなるでしょうか?

勅使川原:とにかく「打席に入り続ける」ことでしょうね。「自分はまだ実力がないから」と遠慮するのではなく、新たな仕事をどんどん動かし、周囲からどんどんフィードバックをもらうことです。

例えば、自分が作った企画書を、直属の上司だけでなく、他部署の上司や同僚にも見せて厳しいフィードバックをもらう。もちろん、忙しい方にアドバイスをいただくわけなので、時間や手間は配慮すべきだと思いますが。

――できないことを指摘されたり、ダメ出しされたりするのは誰しも精神的にツラいものですが、やはりそこを乗り越えなければならないと。

勅使川原:はい。まずはこれまでの人生を振り返り、「あまり人に突っ込んでほしくないところ」や「逃げてきたと自覚しているところ」を認識する。その上で、コンフォートゾーン(快適な領域)に留まって成長につながる挑戦を避けるのではなく、あえて自分を鍛えられる環境に身を置く。そうしなければOSは強くなっていきません。

先ほどお話しした通り、私もコンサルティングファームに入った当初は散々ダメ出しを受けました。最初は「覚えてろよ」と思っていましたし、反発心もあったのですが、「ここは彼らの流儀があるはずだ。まずは一回自分を崩して、イチから学んでみよう」と決め、腰を据えて取り組みました。結果として、そこで身につけた技術は素晴らしいものでした。

――なぜ勅使川原さんは素直に「イチから学ぼう」と思えたのでしょうか?

勅使川原:今振り返ると、「同世代との生存競争」を意識していたからなのかもしれません。自分がサボっている間に同世代はどんどん成長していく。一度OSから逃げると、戦える場所がどんどん狭くなってしまう。そんな焦りや危機感を持っていました。

あとは、自分の専門スキルに強いこだわりや思い入れがなく、一つのことを突き詰める勇気がなかったからでしょうか。私は何事もある程度学んで実践できるようになった段階で、コンフォートゾーンを築き、そこでのんびりと仕事をしてしまう性質がありました。だから、その傾向が感じられたらすぐ転職するようにしていたんですよね。ここが上の生存競争にもつながってきます。

――同世代との生存競争に対する焦りや危機感が、OSへ意識を向かわせたと。OSを鍛えることで、勅使川原さんご自身のキャリアはどう成長したと感じますか?

勅使川原:いくつかのタイミングで「視座の上がる瞬間」があったと感じます。プレイヤーから、マネージャー、そして役員へと、上のレイヤーの人たちが「何を考え、どう世界を見ているのか」という価値観がインストールされ、仕事の解像度が劇的に変わりました。

そしてそこで、「次にこれがやりたいのかも」という今までとは違う「WILL」も見えてきて。その時は仕事がめちゃくちゃ楽しくなるんですよ。

「つらい、つらい、つらい、めっちゃ楽しい」
「つらい、つらい、つらい、めっちゃ楽しい」

みたいなサイクルですね。

勅使河原さん
画像提供=MEETS CAREER by マイナビ転職

この章のまとめ
● OSを鍛えるには「打席に入り続けること」「フィードバックをもらい続けること」が大切
● 同世代との生存競争に勝つために、OSを鍛え続けることが大切
● OSを意識しながら仕事をすると「視座」が上がる

AI時代こそ「OS」を鍛える価値はある

――AIが急速に普及するこれからの時代においては、やはりOSの価値も変わってくるのではないでしょうか?

勅使川原:そうですね。AIの進化で「55点〜60点くらいの答え」を誰でも一瞬で出せる時代になりました。これまでは調査に数か月、企画に1か月かけて、年に数回の意思決定をしていたようなプロジェクトも、今は2週間単位で高速にPDCAサイクルを回せるようになってきています。

だからこそ、AIが出した答えをチューニングして組織に実装するスキル、それをやり切れる人の価値が飛躍的に高まっています。

――AIがプランニングをするからこそ「やり切る力」が問われると。

勅使川原:はい。単純にPDCAサイクルが早く回れば回るほど、人を説得し、納得させ、動かすタイミングは増えてくるはずなので。

その意味で、今後は会社や組織の「隙間産業」を担える人がより高く評価されるのではないかと感じています。

――ここでいう「隙間産業」とは?

勅使川原:AIを使いこなせる人とそうでない人をつなぐ役割です。AIを活用してどんどん生産性を上げている人とAIを使いこなせず生産性が下がっている人の間に入り、双方の伝えたいことを“翻訳”しながら、組織としての生産性を最大化させる。AIが使えない人を見放すのではなく「教えますよ」と寄り添える。そんな人は重宝されるでしょうね。

つなぎ人材
画像提供=MEETS CAREER by マイナビ転職

平均点がすぐに出せる時代だからこそ、理屈だけでは動かない人間を動かし、物事を完遂させる「高密度なやりきり力」を持つ人こそ、今後のビジネスシーンを牽引していくのだと確信しています。

この章のまとめ
● 今後求められるのは、AIが出した答えをチューニングして組織に実装するスキル
● AIを使いこなせる人とそうでない人をつなぐ人材が重宝される
● 人を説得し、納得させ、動かすのは、結局人でなければできない

取材・編集:はてな編集部 制作:マイナビ転職

当記事は「MEETS CAREER by マイナビ転職」からの転載記事です。MEETS CAREER by マイナビ転職は、キャリアや生き方、年収アップのヒントを学び「なりたい自分」の解像度を上げるメディアです。時代を牽引するリーダーや自己実現を目指す人たちの思考や行動をインタビューを中心にお届けしています。元記事はこちら