パナソニックが逃した「大チャンス」
日本人の前頭葉が老化したことを私が強く感じたのは、アメリカでイーロン・マスクのEV(電気自動車)「テスラ」が登場したときでした。なぜこれを日本企業がやらないのか、と思いました。日本企業といっても、私が期待したのは自動車メーカーではありません。電機メーカーです。
とくにパナソニックなどは、家電製品のモーターをつくる技術に関しては世界最先端の企業といえるでしょう。しかもパナソニックが「お荷物」になるとしか思えない三洋電機を買収した理由は、その畜電池の技術が欲しかったからでした。
ならば、電気自動車事業に進出してもおかしくはありません。もともと自動車メーカーでも電池メーカーでもなかったテスラは、バッテリーの設計に苦労して、試行錯誤を繰り返していました。リチウムイオン電池の世界的先駆者であるパナソニックの技術をもってすれば、より早く、よりスマートな電気自動車を開発できたのではないでしょうか。
しかしパナソニックは、テスラと提携してネバダ州に建設したギガファクトリーの共同運営に参加したものの、自ら自動車メーカーになろうとはしませんでした。いわば「テスラを支えるだけで、テスラになろうとはしなかった」わけです。
これは、まさに「前頭葉の機能不全」といえるでしょう。自ら「家電の会社」というレッテルを貼りつけ、それを剥がすことができない。だから世界に誇る技術がありながら「電池は必要とする相手に供給すればよい」「EVは自動車メーカーの仕事」としか考えられなかったのです。
日本企業が技術を活かせなかったワケ
有り体にいえば、頭が固い。この頭の固さこそが、「前頭葉が働いていない」ということにほかなりません。そこには意欲も思考力も創造性も見られないのです。
この30年間、日本ではこれと同じようなことが、さまざまな企業や業界で起きています。たとえば日本にはNEC、富士通、シャープ、パナソニックなど世界最先端のモバイル端末技術を持つ企業がありましたが、「売れない」「操作がしにくい」とスマートフォン化を見送り、アップルの後塵を拝しました。
そのスマートフォンとの融合に踏み込めなかったのがカメラ業界です。キヤノン、ニコン、オリンパスなどは世界最高のレンズ技術を持っているにもかかわらず、「スマホのカメラはおもちゃみたいなもの」としか認識できず、カメラの通信端末化に乗り遅れました。かれらが重視していたコンパクトカメラ市場は壊滅的な状態になり、スマートフォン企業に敗北することになったのです。
また、NTTは90年代にインターネットの世界標準に乗り遅れました。ISDNの推進に固執して、ADSLや光回線の導入が遅れたのです。社内には世界最先端の技術者がいたにもかかわらず、それを活かすことができませんでした。
このような例は、枚挙にいとまがありません。日本企業は「前頭葉バカ」が多数派を占めたことで、思い切った方向転換や新規事業への進出といったチャレンジができなくなってしまいました。経済の低迷で「失われた30年」になってしまったのも当然です。



