鳥の糞からの復活劇は「起こり得る」

650個中の5個だから、生存率は1%に満たず、99%の卵はお陀仏だぶつになったことになる。けれども魚の繁殖戦略は本来そういう「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」作戦である。カダヤシ類のメスの産む夥しい卵のうち、ほんの一部でも無事に孵り、成長してくれればおんの字なのだ。

「鳥の糞からの復活劇」が自然界でどれほど起きているのかは、今のところわからない。だが、それが確かに起こり得ることを実証した意義は大きい。

では、カダヤシ類以外の魚ではどうなのか。孤立した池にも魚が住み着いているという生態学のミステリーは、鳥の糞で説明できるのか。

件のカダヤシ類の卵は、魚卵としては特殊である。硬くて厚い膜に覆われ、水の干上がる乾季をも生き抜く耐久力を持つ。だから鳥の消化器官を生きたまま通過することも、ある意味では納得がいく。

であるならば、今回の発見が世界中の生態系に敷衍できるか否かを判断するには、より平凡なタイプの魚卵を使った実験結果を待たねばならない。

コイとフナの卵を使った実験

カダヤシ類の実験に感銘を受けたヨーロッパの研究チームが、今度はコイとフナの卵を使った実験を試みた。

出ました、コイとフナ。これらは移入のミステリーを象徴する存在であり、日本を含む東アジアでもヨーロッパでも、池という池、沼という沼、湖という湖に住み着く。低酸素に滅法強く、しかも雑食性なので、他の魚なら耐えられぬよどんだ水でも暮らしていける。だが「移民一代目」がどうやって外から入り込むのかは謎のままだ。

コイ
写真=iStock.com/Czanner
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彼らの卵もカダヤシ類のように、鳥の糞から奇跡の復活劇を遂げるのか。重要なことに、コイとフナの卵は硬い膜に覆われておらず、ぷちぷちとした平凡なタイプである。鳥に食べられたらあっさり消化されそうだし、実際、カモなどの水鳥は水草に産み付けられた卵を嬉嬉として食べる。栄養とカロリーの塊がおいしくないはずがない。

そう考えれば、カモに食べられたコイとフナの卵が消化器官を通過し、糞としてよその池や沼に落とされた後、不死のヒーローのごとく蘇って仔魚が産まれるなんて奇跡は、夢にも起きそうにない気がする。