市販薬で成長してきた第一三共

現在、第一三共は、市販の大衆薬事業など非中核資産を売却し、世界トップのがん治療薬企業になることに取り組んでいる。

同社のそうした戦略の源は、19世紀後半にさかのぼる。当時、高峰譲吉博士が、麹菌から消化酵素のタカヂアスターゼを発見した。その後、同社は研究開発を重ね、風邪薬の「ルル」、胃腸薬、育毛剤などを開発・発売した。同社は、研究開発によって市販薬を創出して成長した。

1970年代後半以降、同社は、医療用医薬品分野で本格的に新薬を投入し始めた。抗悪性腫瘍剤、抗生物質、高血圧治療薬など、広範囲に医療用の治療薬開発、供給体制を拡充した。1980年代、同社は米国などへの海外進出も本格化した。2024年度時点で、海外売上比率は69%だった。

第一三共本社
第一三共本社(写真=Coffee1000mg/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

世界的製薬メーカーに後れを取った

2000年代、世界の製薬業界では、合併や買収が急増した。その狙いは、治療の高度化、特許の期限切れリスクの分散、バイオ医薬品など研究開発費の急増に対応するためだった。一方、ファイザー、ノバルティス、ロシュなどの大手メーカーは、買収を重ねて世界シェアを急速に高めた。

第一三共は、血圧降下剤の「オルメテック」が成功したが、成長力は海外勢に見劣りするとの見方が多かった。その打開策として、2008年6月、同社は5000億円で印製薬会社ランバクシー・ラボラトリーズ社を買収した。

国内の市販薬メーカーから、後発医薬品(ジェネリック)の世界大手へ、事業戦略を転換しようとした。ただ、その目論見は、結果として思った成果を挙げることはできなかった。

買収後3カ月で、ランバクシーは米国向けの輸出停止を命じられた。衛生管理基準の統一など、組織の統合も難航した。リーマンショック後の株価急落で、2009年3月期は巨額の減損を計上した。2014年、第一三共はランバクシーを売却した。

2016年ごろから、第一三共は再度、グローバル企業を目指す成長戦略を始動した。成長領域として狙いを付けたのが、がん治療薬だった。同社の研究開発の成果として、有効な治療薬を創出できたことが背景にあった。