【久住】NTTの素人にもできた。その事実が、経験がなくても陸上養殖という一次産業に参入できるエビデンスになると考えています。NTTには、“0から1”をつくるのは苦手な人が多い。逆に1ができると“1から2”“1から3”にするのは得意。最初に産みの苦しみを味わいましたが、これからはわれわれが得意な“標準化”が陸上養殖を広めていく鍵になります。

陸上養殖を広める“標準化”でポイントとなったのが、これまで明らかになっていなかったエビを養殖する上で、どんな環境が最適なのか、数値化したこと。

試行錯誤を経て、「この水槽の大きさなら、pHや溶存酸素濃度の値はこれ、飼育密度はこれ」「この密度なら、給餌の量や間隔はこう」というエビにとって最適な環境の再現が可能になりました。

最適な環境で、栄養価の高いエサを与えることで、味も食感も格段に向上しましました。取引先には味も食感も、高級食材のクルマエビに匹敵するという評価を受けています。実際、味の数値を分析するとクルマエビと同等の結果が出ました。

「養殖のシステム」をパッケージ売りする

次のステップが、フランチャイズ化や、システムの販売です。いまは陸上養殖に参入したい業者にわれわれの知見や仕組みを提供する事業に取り組んでいます。NTTだけで日本の食料自給率に貢献しようと思っても限界がありますから。既にエビを使った商品を作るメーカーさんから「自分でエビを作りたい」といった問い合わせや、地方自治体さんから「廃校になった校舎を活用できないか」と相談をいただいています。

国内最大シェアと言っても磐田プラントとNTTグリーン&フード直営のプラント合わせて年間の生産量が最大180トン。対して、エビの輸入量は約20万トン。全体の数字から見れば、微々たる生産量です。しかしシステム事業が軌道に乗れば、10年後には消費量の数割を陸上養殖のエビが担えます。それは、決して不可能な未来ではありません。陸上養殖は、日本の食と未来を守る事業になり得るのです。

(後編へ続く)

(取材・構成=ノンフィクションライター・山川徹)
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