陸上養殖は勘や経験に頼らず、自然の影響も受けない
【久住】水産業は、生産量が温暖化や気候変動、海の状況に左右されます。それは、これまで主流だった漁や、海上に設置した生簀や筏で魚や貝類を生産する海面養殖も同じです。
従来の水産業で頼りにされたのが、事業者の勘と経験。しかし勘と経験頼りでは、新規参入のハードルが上がってしまいます。世代交代によって生産量が落ちたり、後継者がいなくなったときに事業が継続できなくなったりするリスクがあります。
一方で陸上養殖では、陸上に設置した水槽のなかで飼育します。自然の影響を受けず、データに基づいて水槽内の環境を管理できる。ずいぶん前から気候変動や乱獲などの影響で漁獲高が減少していますが、陸上養殖を事業化できれば、安定して生産できるようになります。
海外の主流である広い野池でエビを飼育する粗放養殖は、台風や温暖化などの自然環境に左右されやすいだけではなく、水質のコントロールが難しい。病気やストレスによる共食いなどによってエビが死んでしまう率が高くなりがちです。熱帯雨林を伐採し、養殖場をつくる場合も少なくありません。
日本の沿岸部でもブラックタイガーなどのエビの養殖が行われていましたが、海水温の上昇や、エビのエサや排泄物によって海水が汚染されたり、病気が流行ったりして事業の継続が難しい。こうした課題を克服できるのが、水質や環境を精密に制御できる陸上養殖でした。
そうしてNTTグリーン&フードを立ち上げたのが、2023年7月。その翌年の12月から磐田プラントの操業をはじめました。
NTTの水槽には無数のセンサーやカメラ
磐田プラントに設置された水面に浮く茶色に濁った泡は、汚れではない。エビの排泄物やエサの食べ残しを微生物が分解したあとの「バイオフロック」だ。
各水槽には紐状のセンサーが垂れ下がり、無数のカメラで水温や塩分濃度、酸素量などをリアルタイムで測定している。プラント内にはWi-Fiが飛んでおり、数値が正常な範囲を少しでも外れると担当者のスマホのアラームが鳴る仕組みになっている。
従来の養殖現場とは異なる光景である。
初出荷まではどのような苦労があったのか。


