トップアスリートの体型が“ぽっちゃり”の理由

トップアスリートと聞くと、誰もがシックスパックに割れた腹筋や分厚い胸板、大きな肩まわりを思い浮かべるかもしれません。

しかし、実際は違います。競技にもよりますが、彼らの体型は一般的なイメージとは異なり、「ぽっちゃり系」や「寸胴体型」に見えることが多いのです。

もちろん、筋肉量そのものは圧倒的に多いですが、特に体幹部の筋肉のつき方は、ボディビルダーのような「見せる筋肉」とは根本的に異なります。

ここで重要なのは、外見(表面の筋肉系)と中身(深部の筋肉系)の発達は別のものであり、外見と機能は切り離して考えるべきだということです。

一般的に「ムキムキの肉体」としてイメージされるのは、身体の表面にある表層筋群(いわゆるアウターマッスル)です。シックスパックをつくる腹直筋、分厚い胸板を形成する大胸筋、大きな肩をつくる三角筋などが代表的です。

これらを鍛えることで、「見た目の強さ」を手に入れることはできます。

しかし、トップアスリートの強さを支えているのは、むしろ身体の深部にある深層筋群(俗にいうインナーマッスルですが、厳密には異なります)です。

深層筋群の発達がないとケガのリスクにつながる

深層筋群は全身に分布しており、関節の安定(専門的には「動的安定性」と言います)を保ち、骨格内での力の伝達をスムーズにする役割を持ちます。

深層筋群が十分に発達していることで、競技動作の際に身体がブレることなく、全身の力を効率的に伝えることができるのです。

つまり、深層筋群の発達こそが「身体のつながり」を生み出すカギ。

逆に、未発達なままアウターマッスルばかり鍛えてしまうと、見た目の変化はあっても動作の効率が下がり、パフォーマンスの低下やケガのリスクにつながります。

たとえば、シックスパックになるほど腹直筋を鍛えても、腹直筋は背骨につながっていないため、体幹の連動性や力の伝達にはあまり貢献しません。

むしろ体幹が固くなり、スムーズな動きが妨げられてしまうことすらあります。

汗が滴り落ちる男性ボクサーの胴部
写真=iStock.com/simonkr
※写真はイメージです

トップアスリートの体幹が「寸胴体型」をしている理由はほかにもあります。

深層筋群が発達していることで背骨や胸郭きょうかくが柔軟に動き、さらに腹圧も高いため、体幹の容積が内側から広がるような構造になっているためです。

つまり、内側から広がることで腹圧が向上し、背骨が安定します。それにより「身体のつながり」が生まれ、力の伝達効率がアップするということです。

この構造こそが体幹の安定を生み出し、高いパフォーマンスを発揮するための基盤となります。