標本5体は金沢から

――こちらは「シーラカンス・ミュージアム」の顔も持っています。

水族館を造ろうとした時、生きた深海生物以外に、さらにここでしか見ることのできない目玉を探しました。するとご縁があり、シーラカンス学術調査隊が日本に持ち込んだシーラカンスの標本5体にたどり着きました。学術調査隊のスポンサーになった男性が金沢にいて、5体を含む調査隊の成果物や調査物を保管していたのです。

シーラカンスは、国際的な希少動植物保護のためのワシントン条約の対象生物です。その扱いは、1989年にII類からI類にランクアップしました。研究目的以外の国際取引が禁止されたのです。学術調査隊の5体はそれ以前に、アフリカのコモロ諸島から日本に運ばれていました。

I類になると展示するためには、かつての環境庁、今の環境省からの許可が必要です。金沢の男性は、地元でシーラカンス博物館を開こうとしたのですが、長らく許可が出なかったと聞いています。やっともらった時は、バブル経済(1986年末~1991年初めの好景気)がはじけて、男性も歳を取ってしまい難しくなってしまった。そのタイミングで、うちが声をかけて、当館に来ることになりました。

――単に標本を展示しているだけでなく、説明もかなり充実しています。

東京の池袋にあるサンシャイン水族館で館長をしていた安永正さんが、当館の副館長になっています。深海生物に加え、シーラカンス展示でも力を発揮してもらっています。標本などはもらえたのですが学術調査隊との接点は全くないので、シーラカンスの説明書きも、学術調査隊の紹介も全部、我々の自前です。

深海生物もシーラカンスも、見せ方にこだわっています。日本の水族館は教育的な要素が強く、「学び」が前面に出がちです。生息環境をきちんと再現して見せようと努力するのは大切ですが、当館は没入感のあるエンターテインメント施設を目指しています。ディズニーランド風にしたほうが、魚に興味がない方にも喜んでもらえます。

高野真吾『シーラカンスに会いに行く』(ポプラ社)
高野真吾『シーラカンスに会いに行く』(ポプラ社)

中心に冷凍シーラカンスを配置した一室は、周辺の展示も「シーラカンス尽くし」です。ある壁面では本物のシーラカンスの脊柱や脳、卵などを並べ、別の壁では繁殖を解説しています。1階外側の出入り口からして、シーラカンスやタカアシガニのオブジェを配置し、入場前から期待値が上がる演出をしています。

――今後、水族館をどのように発展させたいと考えていますか。

当館の横には、コロナ禍で閉めてしまったイタリアンレストランの建物があります。2階同士がつながっていることから、将来的には拡張する構想を持っています。2011年の開業から階段とトイレ以外は、どんどんと変化させてきました。2025年も7月に「イマーシブディープシーワールド」をオープンさせたのですが、さらなる進化を目指します。

そして佐政水産がスローガンとして掲げる「沼津のあしたを、つくろう」の言葉通りに、沼津を盛り上げていきたいです。

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