「離婚の遺伝率はおよそ40%」の示す意味
両親が離婚している場合、子どもも離婚する可能性が高くなることは以前から知られていた。
それを説明づける環境要因としてまず頭に浮かぶのは、たとえば、両親の離婚を経験したことで、子どもが人間関係をうまく結べなくなったり、安定した人間関係とはどういうものかわからないまま育ったりするというものだ。
ところが、スウェーデンでおこなわれた最近の養子研究で、両親の離婚と子どもの離婚との関連は、環境ではなく遺伝が生み出していることが示された(15)。養子に出された2万人の子どもを対象にした研究から、生みの母親がのちに離婚した場合のほうが、育ての母親が離婚した場合よりも、子どもが将来離婚する確率が高いことがわかったのだ。
複数の研究を分析して導き出された離婚の遺伝率はおよそ40%であり、100%にはほど遠いことから、離婚には遺伝以外の要因も影響することがわかる。とはいえ、主な系統的要因が遺伝なのはまちがいない。
対照的に、遺伝的影響を統制したあとには、離婚の予測指標となる環境要因はひとつも特定されなかった。
このスウェーデン養子研究のように、遺伝的影響を統制することはとても重要だ。親の離婚は子どもの離婚の強力な予測因子だが、一見環境に起因すると思われるこの関係も、実際には遺伝がもたらしている。
固定された運命ではない
すなわち、離婚は偶然の出来事ではない。私たちは人と関係を結んだり、壊したりする。そう、「自分の外側で起きる」出来事にふりまわされる単なる受動的な傍観者ではないのだ。
しかしこの場合もやはり、遺伝的影響とは文字どおり影響であって、固定された運命ではない。人に不運をもたらすシュリマーザル(イディッシュ語で「運に見放された」を意味する)遺伝子など存在しないのである。
これはライフイベントにかぎった話ではない。どんなものであれ、いわゆる「環境」要因には、遺伝の影響が含まれている可能性がある。
環境要因についての遺伝学研究から、子育てやピアグループ〔青年期以降の友人関係〕、社会的支援、さらには子どものテレビ視聴時間など、「環境」とみなされている要因にも大きな遺伝的影響があることが判明している。
※本文中の原註は本記事では省略しています。詳細は『こころは遺伝する』書籍をご参照ください。


