ライフイベントの3分の1が遺伝に起因

驚いたことに、一卵性双生児は二卵性双生児よりも、ライフイベントの類似度が2倍高いことが判明した(二卵性の相関係数が0.15なのに対し、一卵性は0.30だった)。これと同じパターンは、別々の家庭で育ったふたごでも認められた。

この相関が示唆するのは、ライフイベントの個人差の30%は親から受け継いだDNA差異で説明されるということだ。それまでずっと、ストレスフルなライフイベントは純粋な環境要因だと考えられてきたが、実際には、そのほぼ3分の1が遺伝に起因しているのである。

それにしてもなぜ、ストレスフルなライフイベントに遺伝の影響が表れるのだろう? 本研究で使われたアンケートには、ストレスフルな出来事が「起きたかどうかという認識」と、「それに対してどう反応したか」に関する質問が含まれていた。

パーソナリティへの遺伝的影響はこのふたつの質問に対する答えの両方に表れる。

病気やけが、経済状況、人間関係の問題をストレスフルととらえるかどうかには個人差があり、とりわけ、そうした出来事がどの程度自分に影響を与えたと感じるかには、その人のパーソナリティが関係する。

楽観的な人がさまざまな経験をバラ色の眼鏡をとおして見るのに対し、悲観的な人は灰色の眼鏡をとおして見るのである。

離婚は単なる偶然ではない

では、ストレスフルな出来事そのものはどうだろう? 離婚は客観的な出来事であり、たいていの人にとって、人生で最もストレスフルな出来事だ。離婚についての最初の遺伝学研究は、センセーションを巻き起こした。

1500組の成人のふたごを対象とした研究で、一卵性の離婚の一致率は二卵性よりもはるかに高く(二卵性が16%なのに対し、一卵性は55%)、離婚への遺伝的影響の大きさが示されたのだ。《USAトゥデイ》紙はこの研究を「愚かさの見本」と呼んだ。

離婚が遺伝要因に影響されるなど、あまりに荒唐無稽な話だとみなしたからだ。しかし離婚のような客観的な出来事に、パーソナリティに大きくかかわる遺伝の個人差が影響していると考えるのは「愚かさの見本」だろうか? 

私はむしろ、離婚のような出来事が、本人とはまったく関係ない、単なる偶然として起きると考えるほうが不合理だと思っている。

花嫁と花婿のフィギュアが載った崩れたウエディングケーキ
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当時の新聞の見出しとは反対に、この研究はそもそも、人を離婚にかき立てるような「離婚遺伝子」なるものが存在すると主張しているわけではない。みなさんはもう、その点を理解しておられるのではないだろうか。

あるいはまた、安定した結婚生活を送るのがむずかしくなるような「悪い遺伝子」があるわけでもない。その後の研究によって、離婚への遺伝的影響の三分の一は特定のパーソナリティによって説明できることが示されている(14)。

意外にも、明るく、人生を楽しみ、感情豊かで衝動的なタイプの人のほうが離婚しやすい傾向にあることが判明している。これはパーソナリティの悪い側面ではないし、実際、このタイプの人はそもそも結婚相手として好ましいのではないだろうか。