「イラン防空網による迎撃」を意識したものか

対イラン攻撃では防空システムによる迎撃が予想され、トマホークのステルスコーティングは、それを意識した措置だったのかもしれないし、あるいは新規に取得したトマホークにはこうしたコーティングが標準化されているのかもしれない。

いずれにせよ、この黒いトマホークという全く未知の兵器が突如実戦投入された事実は、アメリカの兵器開発に関する情報管理の徹底ぶりの証左といえるかもしれない。

今回のイラン攻撃では、これまで解説した3種類の新兵器が投入された。

LUCASは、これまで課題とされてきた高価な誘導兵器の使用と再補充の課題を克服する、安価でそれなりに使える低価格巡航ミサイルとして活用できる。

また、PrSMはその飛翔速度の速さを活かした時間的に制約のある目標(たとえば定期的に移動を繰り返す目標など)への攻撃に、黒色トマホークは敵の防空システムや電子戦システムが展開する重要防護施設への攻撃に、それぞれ有用であるように思われる。

航空攻撃だけで無力化するのは不可能

ところが、こうした新型兵器を投入してもなお、アメリカはイランの軍事力を完全に無力化できているわけではない。イランは、サウジアラビアのプリンス・スルタン空軍基地に駐機していたアメリカ空軍の「空飛ぶ指揮所」である早期警戒管制機(AWACS)のE-3Gや空中給油機を攻撃したほか、イラン領空内ではアメリカ空軍のF-15E戦闘機が撃墜されている。

早期警戒管制機(AWACS)の「E-3G」
出典=DVIDS
早期警戒管制機(AWACS)の「E-3G」

また、アメリカの軍事専門ウェブメディア「The Mar Zone」の分析によると、アメリカ軍は約40日間にわたる作戦期間中に延べ1万3000回の出撃を行い、そこで39機の航空機を喪失、10機が損傷を受けたという。

ただし、喪失した機体の大半は無人航空機であるMQ-9「リーパー」(24機)で、有人航空機でも友軍による誤射や意図的に破壊されたものも含まれている。

たしかに、アメリカ軍はイランの主要な軍事施設を破壊し、ミサイル発射装置をはじめとする各種兵器なども無力化していることは間違いないだろう。しかし、イランの領土は広大であり、地下トンネルに隠されたミサイルやその保管施設を航空攻撃だけで全て無力化することは不可能だ。