トランプは「戦争目的」を達成している

ランド研究所は、軍事シミュレーションや定量分析に基づき、米軍の展開能力、海上交通保護作戦の実効性、エスカレーション管理の課題を体系的に評価する。米軍は通常戦力で圧倒的優位にあるものの、イランの機雷・ミサイル・無人機による非対称攻撃は完全には抑止できず、海峡の安全確保には多国間協力とISR(情報・監視・偵察)能力の強化が不可欠だとされる。また、偶発的衝突が大規模戦争に発展するリスクを最も重視している点が特徴である。

カリフォルニア州サンタモニカにあるランド研究所の本部
米カリフォルニア州サンタモニカにあるランド研究所の本部(写真=Coolcaesar/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

上記の分析を総合すると、ホルムズ海峡情勢は「短期的には不安定化が続き、長期的には非対称戦力の増大によって複雑化する」という共通認識が浮かび上がる。

つまり、米国にとって長距離弾道ミサイル阻止やテロ支援停止という戦争目的がほぼ達成されており、これ以上いたずらに状況が長引くことは得策ではない。わずかに残存する核の問題で一定の妥協がなされれば、それで事態は収束に向かうことになる。一方、イラン側については、軍事的・経済的・政治的に非常に厳しい状況が常識的にわかる。そのため、イランも米国によるホルムズ海峡閉鎖が継続することを望まない。

ホルムズ海峡封鎖は「核問題」の付属品に過ぎない

米国大統領の判断は多様な情報分析の上に成り立つ。その決断がどのようなものになるかは、現実的な制約を踏まえた丁寧な分析を行うことで、ある程度予測できる。

仮に、トランプ大統領が非現実的な命令を下すとすれば、既定路線からの「逸脱の強度」を見定めることが大事だ。その逸脱具合の強度に基づいて事後シナリオをあらかじめ作成することが重要である。予測が当たった・外れたの問題ではなく、予測通りならそれで良し、逸脱した場合の対応も準備するだけの話である。

ホルムズ海峡の問題は実は些細な問題に過ぎず、交渉の本丸が核に関する残存する交渉であることは明らかだ。そのため、核問題の交渉内容のみが問題の焦点となる。米国にとって好ましくないことはイランに核能力が一部残存していることだ。そして、前述のヘリテージ財団もランド研究所も核能力の完全排除は難しいという見解を示している。