食材の良さを生かす料理を
原料の原味を殺さないのが料理のコツのひとつであります。きゅうりならきゅうり、そらまめならそらまめに、それぞれの持ち味があるのですから、その持って生まれた味を殺さないように工夫しなければなりません。小芋の味ひとつにしたって、人の力ではどうにもできないのでありますから、持ち味を生かすということは、とりもなおさず、生きたよい材料を扱うということになるのであります。
例えば湯豆腐を拵えるにしても、その豆腐のよしものを探し当てねばならない。それでなくって、醤油だ、薬味だといって、それらにばかりやかましくいったところで、もちろん、それもやかましくいわねばなりませんが、それら工夫のことは第二義のことで、それよりも豆腐の吟味が第一義なのであります。材料の精選とともに材料の原味を殺さぬこと、その味というものは、科学や人為では出来ないものでありますから、それを貴ぶのであります。
※初出:1933年『星岡』(『魯山人著作集』五月書房収録)


