スエズ運河の通航再開に向けた高いハードル
11月に入ってフーシ派がイスラエルの船舶、イスラエルの港湾の攻撃を停止すると報道があり、紅海の通航再開へとつながるか注目されています。
ただし、紅海やスエズ運河の通航が本格的に再開するためには、いくつかハードルが残されている状況です。
大前提となるのは、停戦が進行して再び商船への攻撃が起こらず、実際に運航に携わる船員の安全が確保される見通しが立つことです。
そのうえで戦争リスクに対する保険料率が低下して、荷物に対する外航貨物海上保険や船舶に対する船舶保険などの海上保険料が下がること、さらに船舶のオーナーである船主や運航を行う海運会社、船員の同意を得られることが必要条件となります。
紅海通航に戻ることは、航海にかかる時間とTEUマイルの短縮を通じ、燃料費や船員費といった運航コストの削減につながるメリットがあり、2026年にはスエズ運河の通航再開が本格化するとの期待も高まっているとの報道も出ています。
しかし、上述の条件が満たされるためにはある程度の時間が必要になると見込まれ、現在でも通航再開に対して海運会社間でも対応が分かれており、2026年4月時点での見通しはまだ不透明です。
トランプ政権と米中摩擦が変えた輸出シェア
地政学的問題によるサプライチェーンの問題としては、米中貿易摩擦も典型例として挙げられます。
2010年代には労働集約性の高い軽工業品を中心に、中国から東南アジアや南アジアへの生産拠点の移行が進行してチャイナプラスワン(中国以外の生産拠点の模索)の動きは起こっていました。
これに加えて、大きな変化がみられたのは第1次トランプ政権の時期です。
米中間の緊張の高まりを受けて、北米航路では米中貿易摩擦の影響が明確に表れました。
アジアと米国を中心とした荷動き全体のボリュームは従来並みで推移していますが、アジア輸出国側の構成に変化が表れたのです。
中国からの輸出が減り、東南アジア・南アジアからの輸出が拡大しました。
2018年における中国積みのシェアは65.3%であったのに対して、翌年には59.8%に急減しました。
ASEANのシェアは15.3%から19.6%に高まりました。
中国は改革開放政策に転じてから、30年近く経済成長を続けてきたため、沿岸部を中心に電力や水道、道路や輸送網など製造業を営むためのインフラが整っており、大規模な生産に関してほかの地域や国々に比べて優位な点は残っています。

