冬季五輪マラソンの障壁は
では冬季五輪のマラソン実施の可能性はどれぐらいあるのだろうか。
冬季五輪は2030年にフランスのアルプス地域、2034年は米国ユタ州のソルトレイクシティでの開催が決定している。それぞれ2月の気温を調べてみると、冬季五輪のマラソンも簡単ではなさそうだ。
2030年大会はレマン湖と北アルプスから南の地中海まで、4つのクラスターに分かれて開催される。もしニースでマラソンが実施されるとなると、2月は雨が少なく、月平均最高気温は11.7度、同最低気温が5.5度。気候的には最高の条件になりそうだ。
だが、ソルトレイクシティは標高が約1300mあり、2月の月平均最高気温は6.2度、同最低気温は-3.8度。マラソンをするには寒すぎる。体脂肪が少ないトップ選手にとっては、非常に過酷な条件になるだろう。
マラソンは暑いと熱中症のリスクが高くなり、タイムにも影響する。一方、寒くてもカラダが動かず、体温を維持しようと体力の消耗が激しくなる。気象条件だけで考えると、マラソンは夏季、冬季ともなかなか難しいようだ。
日本勢は夏季より冬季に金メダルの可能性
ケニア、エチオピア、ウガンダなどの東アフリカ勢は速いだけでなく、暑さにも強い。夏季五輪のマラソンは「暑熱対策」が大きなポイントになっていたが、正直な話、日本勢は金メダルを狙うような“真っ向勝負”は難しかった。
しかし、マラソンが冬季五輪で実施されることになると東アフリカ勢の時代は終わるかもしれない。彼らは寒さが苦手な選手が非常に多いからだ。ケニア国内では気温20度を下回ると毛糸の防寒具やダウンジャケットを着込む人も出てくるほどだ。
実際、駅伝で猛威を振るうケニア人ランナーも寒い日は動きが極端に悪くなる。日本人選手から見ると過剰なほどに防寒対策をする選手もいて、寒さを嫌っていることは明らかだ。
ただ、視点を変えると、日本勢にとってはマラソンが夏季五輪ではなく、冬季五輪で行われた方が金メダルのチャンスが大きくなるだろう。金でなくても、1968年メキシコ大会で銀メダルに輝いた君原健二以来62年ぶりにマラソンでメダル獲得となるかもしれない。
「寒さ」のなかで行われたビッグレースで大金星を挙げた日本人選手も少なくない。例えば2016年のボストンマラソンを制した川内優輝だ。この年は気温が5度にも届かず、強風が吹き、冷たい雨がランナーたちの体力を奪った。ボストンは五輪と同じくペースメーカーが不在の大会のため、どんなレースになるのかわからない。そのなかで川内は変幻自在のレースを見せて、悪条件に大苦戦するスピードランナーたちを退けたのだ。
また2010年の東京マラソンはみぞれが降り、正午の気温が3.7度と大会史上最も低い気温になった。アフリカ勢を含む海外勢が振るわず、藤原正和が2時間12分19秒で優勝した。大会のレベルが近年ほど高くなかった時代とはいえ、日本勢がトップ5を独占した。

