独自の中東外交に徹するメローニ首相

実際、ヨーロッパの主要国の指導者はトランプ大統領から距離を置いている。例えばイタリアのジョルジャ・メローニ首相である。同首相はアメリカのイラン攻撃に対して一貫して否定的だ。そのメローニ首相は4月3日~4日の2日間の日程で、カタールとアラブ首長国連邦(UAE)を訪問、戦争の早期終結や両国の復興支援に関し協議を行った。

2026年4月3日、ジェッダのキング・アブドゥルアズィーズ国際空港で、国賓訪問中のイタリアのジョルジア・メローニ首相を出迎えるマッカ副知事のサウド・ビン・ミシャール・ビン・アブドルアジーズ王子
写真=AFP PHOTO/HO/SPA/時事通信フォト
2026年4月3日、ジェッダのキング・アブドゥルアズィーズ国際空港で、国賓訪問中のイタリアのジョルジャ・メローニ首相を出迎えるマッカ副知事のサウド・ビン・ミシャール・ビン・アブドルアジーズ王子

イタリアはEUの中でもカタール産の液化天然ガス(LNG)への依存度が高い(図表2)。ゆえにメローニ首相はイラン情勢の緊迫化に神経を尖らせており、中東を訪問したようだ。なお同首相は、今回のアメリカとイスラエルによるイランの攻撃に際して、初めて中東を訪問したEUおよび北大西洋条約機構(NATO)加盟国の首脳となる。

【図表】イタリアのLNG輸入量の国別割合(2024)
出所=WITS

これに先立つ3月25日、メローニ首相は北アフリカのアルジェリアを訪問し、アブデルマジド・テブン大統領と会談し、アルジェリアからの天然ガス供給の強化を取り付けた。両国は地中海を挟んで対岸に立地しており、そもそも経済関係が深い。とにかくエネルギーの確保に努めるメローニ首相の姿は、為政者として非常に頼もしいものだ。

アメリカと一線を画し、国益を守る

またイタリア政府は、中東に向かうアメリカ軍機がシチリアにあるイタリア軍基地への着陸を求めた際、事前に協議が行われなかったことを理由にこれを拒否した。基地の利用を認めれば、イタリアがアメリカに協力的だという印象をイランに与えかねないためだ。アメリカと一線を画することで、メローニ首相は国益を守ろうと努めている。

イタリアでは3月22日に司法改革に伴う憲法改正の是非を問う国民投票が行われ、否決されたばかり。メローニ首相の肝いりの政策であったため、その否決は首相にとって打撃になったという評価もある。それが失点だとしても、有権者の評価は決して悪くないし、直後のエネルギー外交を見る限り、その失点を取り戻すに十分な働きぶりだ。

ヨーロッパの首脳陣がトランプ大統領を突き放すようになったのは、そもそも同大統領の荒唐無稽な要求について行けなくなったことのほか、ヨーロッパの中で同大統領への嫌悪感が高まっていることがある。加えて、アメリア国内での支持率の低下が顕著なこともあると考えられる。つまり、政権交代の可能性が高まっていることだ。