順位に振り回される大学とメディア

毎年、ニュースや新聞で「世界大学ランキング」が報じられますが、これだけ多くのランキングがありますので、年中どこかのランキングが発表されています。

おそらく多くの人々は、報道された内容がどの機関のランキングを指しているのかを十分に認識していないのではないでしょうか。それぞれのランキングには独自の評価方法があるのですが、ランキングの背景にある評価基準や方法論が十分に理解されないまま、「日本の○○大学が何位に入った」「ランクインしたのは○校だった」といった断片的な情報だけが広まり、ニュースになって世の中を駆け巡ります。

そして大学関係者でさえ、順位の上下に一喜一憂し、メディアや政策はその数字を大学評価の中心的な根拠であるかのように扱うようにさえなっています。世界大学ランキングの本来の目的は、単に順位を示すことではありません。高等教育の質や特徴、多様な取り組みを可視化し、一般の人々にもわかりやすく伝えることにあります。

「この大学は教育に重点を置いている」「この大学は国際的な共同研究が盛んである」「この大学は留学生が多く、多文化的環境を提供している」「この大学は地域との連携を重視している」といったように、それぞれの大学がもつ特色や「強み」を可視化することが本来の目的です。

研究者の採用にランキングが影響

もしこのようなランキングが正しく活用されれば、国内外に進学や留学を希望する学生が自分の目的に合った大学を選びやすくなり、大学側も自校の特色を明確に示すことができるはずです。

世界大学ランキングには、大学間の健全な競争を促し、教育・研究の水準を向上させるという政策的な目的もあります。特に21世紀に入ってから、中国が世界大学ランキングの作成を先導した背景には、自国の大学の国際競争力を高める国策的な意図があったのかもしれません。

清華大学
清華大学(写真=Windmemories/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

ランキングの公表を通じて大学間競争が刺激され、海外の優秀な研究者を積極的に採用するようになり、結果として中国は現在、世界最大の論文発表国となるまでに成長しています。このように、ランキングが大学改革を推進する契機となる場合もあるのです。

ところが、往々にして、いつのまにか目的は変わっていくものなのです。ランキングの順位が大学の「評価」そのものとして扱われるようになり、「何位に入ったか」「前年より上がったかどうか」が注目されるようになります。

大学の教育理念や地域社会との関わりよりも、ランキングのスコアを上げることが重要視されるようになるのです。研究者の採用方針や教育方針までもが、ランキングで高く評価される指標、たとえば英語論文の数や国際共同研究の件数に合わせて最適化されていきます。