模試→進学先決定は日本独自の文化

日本でも、「学校の序列化」に結びつけられない「偏差値」も利用されます。たとえば学校の中で行われる定期試験の結果から、各生徒の偏差値が計算されることもあります。この場合、「この偏差値だから、この学校」という対応づけはなされません。

しかし、一般的には偏差値は、学力を測るための「手段」ではなく、教育そのものを動かす「目的」となっているのです。模擬試験に代表される学力テストの結果を、時に全国という広い範囲で偏差値によって表現し、それを学校・大学と結びつけていくシステムは、もはや日本独自の「文化」と言ってもいい現象なのです。

2007年3月10日、東京大学の入学試験結果掲示板の前で胴上げされる生徒
2007年3月10日、東京大学の入学試験結果掲示板の前で胴上げされる生徒(写真=Chris 73/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

模擬試験は省略して「模試」とも呼ばれますが、入学試験や資格試験などの本番の試験(本試験)を想定して、事前に行われる「練習用の試験」のことです。模擬試験を受けることで、本番の試験でどれくらいのパフォーマンスを発揮できそうなのかを予測することができます。

また、本番と同じような試験の形式、時間配分、緊張感を体験することで、本番の試験に対して慣れるという意義もあります。

偏差値は平均値からの距離

模擬試験は、本番の試験そのものではありません。「当たり前じゃないか」と思うかもしれませんが、本当に「当たり前」だと思っているでしょうか。たとえば「模擬試験でA判定が出たのだから、もう合格」となるわけではありません。模擬試験はあくまでも「模擬」試験であって、入試そのものではないのです。

おそらく読者の多くは、模擬試験を受けた経験があることでしょう。それを思い出してみてください。

模擬試験を受けると、問題への正答数から得点が算出されます。それを、非常に多くの受験生について記録していきます。すると、非常に低い得点を示す人から、非常に高い得点を示す人まで存在することがわかります。そして、平均値が示されます。

偏差値は、ある受験者が平均値からどれだけ離れた位置にいるかを数値で表現します。偏差値が60あるいは40だと、平均値(偏差値50)から標準偏差ひとつ分、上下に離れた位置にいることを表します。標準偏差は、全体の平均値から集団全体が平均してどのくらい離れているかを意味します。偏差値70(30)は標準偏差2つ分、偏差値80(20)は標準偏差3つ分、平均値から離れていることを表します。

そして、全体が正規分布という釣り鐘型の得点分布を示しているとき、平均値は全体のちょうど中央に位置しており、偏差値60(40)は、得点の高いほう(低いほう)から約16%に位置することになり、偏差値70(30)は得点の高いほう(低いほう)から約2%、偏差値80(20)は得点の高いほう(低いほう)から約0.1〜0.2%くらいのところに位置することを表します。