郊外も高騰で「片道90分」が現実に

かつての首都圏は、都心が高騰しても、少し離れれば価格が急落するポイントが存在し、そこが「安くて広い家」という逃げ道になっていました。しかし、2026年の地価公示が示したのは、郊外エリアも含めて地価が上昇を続け、上昇幅も拡大しているという事実です。

住宅価格が上昇すると、都心での住宅取得が困難になります。その結果、人々はより価格の低い郊外へと居住地を移動させます。これがさらなる需要を呼び、郊外の地価も押し上げるというサイクルが生まれています。この構造は、必然的に「通勤距離の増加」と「通勤時間の長期化」を招きます。

1980年代のバブル期にも「埼玉都民」「千葉都民」という言葉が生まれ、居住圏が拡大しましたが、現在はそれ以上の過酷な状況になりつつあります。中央線であれば吉祥寺や三鷹から立川・八王子へ、常磐線なら松戸や柏から取手へと、検討エリアを押し広げなければ予算が合いません。

今後は「片道90分」が特殊な例ではなく、一般的な選択肢になる時代が到来しています。これは単なる不便さの問題ではなく、睡眠時間の減少や家族との時間の欠落といった、生活の質への構造的なダメージを意味します。

東京の市街地の航空写真
写真=iStock.com/maroke
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金利上昇という「第二の波」が逃げ道を塞ぐ

地価高騰という物理的な壁に加えて、今、私たちの前に立ちはだかっているのが「金利の上昇」です。住宅ローン金利が上昇すれば、毎月の返済額が増えるだけでなく、銀行から借りられる「借入可能額」そのものが減少します。

例えば、5000万円の住宅ローンを組む場合でも、金利が1%変わるだけで、総返済額は数百万円単位で変わります。

・ 地価上昇:物件価格そのものが上がる。
・ 金利上昇:借りられる金額が下がり、返済負担が増える。

このダブルパンチにより、購入検討者は「借入額を抑えるために、より価格の低いエリアを選ぶ」という行動を強く迫られます。その結果、通勤圏はさらに拡大し、人々の生活はさらに都心から遠ざけられていくのです。

価格だけを見て「より遠いエリア」へ逃げる選択は、金利上昇局面においては、資産価値の維持という面でも大きなリスクを孕むことになります。