昔の渋谷は「猥雑な空間」だった
もっと昔に遡ってみよう。当方が初めて渋谷の地に降り立ったのは今から19年前、2007年の事だ。まだそれほど外国人観光客の姿もおらず、スクランブル交差点の周辺を見ても日本人しか居なかった。この頃はフリーハグが一大ブームになっていて、渋谷の駅前にも「FREE HUGS」と書かれたプラカードを掲げた学生風のお姉ちゃんがニコニコしながら立っているのが目に入った。
昔の渋谷は決して洗練されたオシャレな街でもなんでもなく、外国人を喜ばせるための街でもなく、路地に入れば小汚いラブホテル街やらストリップ劇場、風俗店なんぞがひしめき合って、猥雑という言葉そのものの空間でもあった。道玄坂小路だとか百軒店だとか、素人はまず近づくこともない一角もたくさんあった。
円山町まで行けば、東電OL殺人事件のあったアパートとか、ホテル街なんかも未だにある。とにかく怪しい街だったが、だからこその人間臭さを漂わせていた街でもあった。東京の繁華街ならではの情緒、坂道になった細い路地裏を歩くカップル。人と人が惹かれ合う街、二人はどこへ向かうのか……。そういった想像を搔き立てる部分があった。



