中国の経済成長を支えるエネルギー源

①経済成長という「生命線」

中国共産党が統治の正統性をどこに置いているか。それは「経済成長」です。国民を豊かにし、生活を向上させ続けることこそが、一党支配体制を支える最大の柱です。そして、その経済成長を支える安価で安定した電力の供給源が、国内に潤沢に存在する石炭なのです。

もし石炭火力を止めれば、電力不足で工場は止まり、経済成長は鈍化し、社会不安が増大する。これは、体制の安定を何よりも優先する中国共産党にとって、絶対に避けなければならないシナリオです。

②環境問題という「国内の時限爆弾」

しかし、石炭への過度な依存は、深刻な副作用をもたらしました。その最たるものが「大気汚染」です。2010年代、北京や上海などの大都市は、PM2.5(微小粒子状物質)を含む濃密なスモッグに頻繁に覆われ、健康被害が社会問題化しました。

空が灰色に淀み、人々がマスクなしでは外出できない日々は、国民の不満を増大させました。この国内世論の高まりは、政府にとって「経済成長の鈍化」と同じくらい危険なシグナルでした。

中国の天安門
写真=iStock.com/Sean Pavone
※写真はイメージです

脱石炭を宣言する一方、石炭火力を新設

③「CO2排出国」という国際的圧力

さらに、中国は石炭を燃やし続けた結果、世界最大の二酸化炭素(CO2)排出国となりました。地球温暖化対策の国際的な枠組み(パリ協定など)において、中国は常に厳しい視線を浴びることになります。

国内の環境汚染対策と、国際社会でのメンツ。この二重の圧力から、中国政府はついに重い腰を上げます。2020年、習近平国家主席は国連総会で、中国が「2030年までにCO2排出量をピークアウトさせ、2060年までにカーボンニュートラルを実現する」と宣言しました(「30・60目標」)。

村山秀太郎監修『2時間de資源史』(秀和システム新社)
村山秀太郎監修『2時間 de 資源史』(秀和システム新社)
④矛盾するエネルギー政策

この宣言を受け、世界は「ついに中国も本格的な脱石炭に舵を切るか」と期待しました。しかし、その後の中国の動きは、一見すると矛盾しています。

まず、中国は太陽光パネルや風力発電といった再生可能エネルギーの分野で、世界最大規模の投資と設置を進めています。そのスピードは驚異的です。

しかし、それと同時に、中国は国内で「石炭火力発電所」の新設を世界で最も多く進めている国でもあるのです。