日本案なら延伸可能性は高かった
国際協力機構(JICA)の関係者は「日本案を採用していれば、スラバヤ延伸が実現していた可能性ははるかに高まった」という。
根拠は15年に日本政府が提示した案の返済利息が小さいことだ。日本案では、事業費は中国案よりやや高い約62億ドルを想定し、その75%を日本の円借款でまかなうというものだった。金利は年0.1%、返済期間40年、うち10年据え置きという「かなりインドネシア側に譲歩した条件」(先のJICA関係者)だった。
事業費の残り25%はインドネシア政府の国家予算から拠出する。つまり、プロジェクト全体にはインドネシア政府の債務保証が付く、典型的な政府間協力(G to G)方式。利払いについては年間数億円程度で、現在のウーシュの利払いに比べ圧倒的に負担が軽い。
「巨大インフラプロジェクトは建設期間が長いため、毎年の返済利息が非常に重要。日本案は非常に小さいため、コツコツやれば完済はできたはずだ」(同)。
インドネシア政府の中には「バンドンからスラバヤの延伸を日本に依頼したい」との声が一部である。しかし、「一度信頼を裏切った以上、世論として非常に難しい」(同)と考えるのが自然だろう。
中国がニッケル利権を得る“足がかり”だったか
そもそも、ウーシュについては日本も中国も乗客数などで甘い需要予測をしており、最終的にはどちらの国が受注していたとしても「巨額の赤字インフラ」として国民の批判の対象になっていたことは間違いなさそうだ。
ではなぜ中国は、“無理”を承知のうえでも、インドネシアの高速鉄道を推し進めたのかを改めて考えたい。中国は、インドネシアの「資源」に魅力を感じていたと考えられる。いわば、高速鉄道は「ニッケルの利権」を獲得するための足がかりのようなもの。インドネシアが甘い罠に飛びついたとも言える現実が見えてきた。
実際、15年に中国がウーシュの建設を受注してから、それまで以上に中国のインドネシアへの投資は加速した。両国の距離が決定的に近づく一里塚となったことは事実で、「蜜月の10年」を迎えた。
インドネシアの投資調整庁(BKPM)などによると、中国がウーシュを正式に受注した翌年の16年、中国からインドネシアへの投資額は約26億ドルだった。それが、19年には47億ドルに増加し、日本を抜いた。その後も増加を続け、24年には81億ドルで3倍の水準に達した。
(「DOMESTIC AND FOREIGN DIRECT INVESTMENT REALIZATION IN QUARTER IV AND JANUARY – DECEMBER 2016」)
(WORLDBANK「INDONESIA ECONOMIC PROSPECTS The Long Road to Recovery」)
(ANTARA「Nilai investasi China ke Indonesia catat pertumbuhan pada 2024」)


