中国案採用の「根拠」は崩れた
国家予算投入を決めたのはいいものの、年間の利払いは約2兆ルピア(約210億円)規模に達し、プラボウォ大統領が想定する1兆2000億ルピアでは不足が出る懸念がある。2026年3月21日現在、大統領府から最終案の正式発表はないが、「中国側に返済期限延長と利息切り下げで調整した上で、ダナンタラが残りを工面する方針で最終案をまとめている」(インドネシア政府関係者)という。
過去にも詳報したが、日本は2000年代から構想と調査で先行し、14年までは「採用は既定路線」であった。にもかかわらず、結果として中国案が逆転採用された。これが、ウーシュが日本でインドネシアのイメージを悪くする象徴的な事案となった。
中国は、日本が第一段階の実現性調査(FS)を完了した15年夏ごろに調査を開始。その後、わずか数カ月の期間でFSを完了し、そのまま15年10月に正式に中国が受注した。調査結果も酷似しており、流用されたとの疑念が日本の怒りを高めた。当時の菅義偉官房長官も「日本の提案が選ばれなかったのは極めて残念。決定経緯は理解しがたく極めて遺憾」と不快感をあらわにした。
こうした経緯があるだけに、インドネシア政府が中国案採用の根拠として掲げた「国家予算を投入しない」という前提をひっくり返したことは、日本側の信頼を大きく失った。
(「インドネシア国ジャワ高速鉄道開発事業準備調査(フェーズI)ファイナル・レポート」)
(ロイター「インドネシア高速鉄道計画、「中国案歓迎」は遺憾=菅官房長官」)
それでもインドネシアは“延伸に前向き”
中国案を採用した理由の一つに「国会などのチェックを受けない民間投資の形を取ることで任期中の完成を急がせ、選挙の有利な材料にしたかった」(インドネシア財界筋)という背景があるとも言われる。いずれにせよ、巨大インフラプロジェクトについて、インドネシア政府の長期的な運営の見通しが極めて甘かったことが、今回明らかになってしまったというわけだ。
だが、インドネシア政府はまだ延伸を諦めてはいない。
プラボウォ大統領は3月、ウーシュについて現在のバンドンからジャワ島東部のスラバヤまでの延伸計画を了承。さらに遠方のジャワ島東端バニュワンギまでの実現性調査を命じた。プラボウォ大統領としては、ジャワ島横断構想を前面に打ち出し、高速鉄道を国家プロジェクトとして今後も推進したい考えだ。
しかし、延伸計画は約700キロにおよび、ジャカルタ―スラバヤ間の建設工事は現行区間(約140キロ)の5倍の距離に及ぶ。利払いさえおぼつかない現状では、中国も追加の投資を決めることは難しいだろう。
(ANTARA“Prabowo plans to extend Whoosh high-speed rail to Banyuwangi”)

