仕事の合間にトイレで株を売買。休日は遊びにも行かずに分析に明け暮れる。そんな不健康な日常から解放してくれた「ほったらかし投資」で、資産2億円を築いた――。

トイレ・トレーダーの運命を変えた一冊の名著

給料のほとんどをスノーボードやバスフィッシング、飲み会などに使っていた1999年、26歳のときのことです。「その年齢で貯金もないの?」と女友だちにダメ男の烙印を押され、一念発起して投資を始めました。

最初に購入したのは、株。生来凝り性なこともあり、過去の値動きから売り時や買い時を見極めるチャート分析や、企業の財務データなどを基に株式の本来の価値を見極めるファンダメンタルズ分析を用いた投資に、あっという間に夢中になりました。

平日はPCの画面の端にポートフォリオ画面を表示させ、株価が急落するとトイレに駆け込んで携帯電話で売却する。そんなトイレ・トレーダーです。また週末は、ポートフォリオの前から一歩も動かずに分析に明け暮れました。

それでも投資の成果は、小さな利益を積み上げては、大きな損失を出すというパターンの繰り返しです。スノーボードや飲み会もほとんど行かなくなり、投資が自分の時間の大部分を占めるようになりました。

このままでは生活が破綻する……そんな懸念を抱える生活を続けて2年ほど経った頃のことです。『ウォール街のランダム・ウォーカー』(バートン・マルキール著)という本に出合ったのです。「個々の株式を売買するより、インデックスファンドを買ってじっと持っているほうがはるかによい結果を生む」。データを示しながらそう主張した古典的名著です。

「インデックスファンド」とは、日経平均株価やS&P500といった株価指数(=インデックス)と同じように値が動くことを目指した投資信託の商品のひとつです。頻繁な売り買いも要らない「ほったらかし」の投資法で、手数料も安く抑えられます。チャート分析やファンダメンタルズ分析に疲れ切っていた私は、このシンプルな投資法に膝を打ち、毎月4万円をインデックス投資に回しました。2002年のことです。

当初のポートフォリオは、日本株式、外国株式、日本債券、外国債券を1:1:1:1で持つ4資産均等配分でした。やがて、当時言われていた「リスクの高い資産(株など)は、100マイナス年齢%まで。残りをリスクの低い資産(債券など)に」に従い、株式:債券を7:3に変更しました。

そうして06年〜07年頃には、プラス10〜20%あたりで順調に推移していったのです。結婚して、会社員の妻と二馬力の収入となり、毎月の積立投資のほかにも、あまったボーナスを投資に回すなど、元金が大きく増えていったのもこの頃です。

そんななか08年にリーマンショックが起こります。私の資産は約50%に暴落、金額にして1000万円が吹っ飛びました。インデックス投資は、損が出ても売却することなく、できるだけ長く持ち続けるのが鉄則。そう理屈ではわかっていても、すでにマイナスになっている口座に、貴重な資金を投入し続ける最悪の気分は、今になっても忘れられません。

輪をかけて私を落ち込ませたのは、ブログのコメント欄が荒れたことです。これまで一緒にインデックス投資を盛り上げてきたブログの常連さんからも「謝罪しろ」などの罵詈雑言が書き込まれたほか、相互リンクしていた投資ブログもつぎつぎ更新を停止。大金、信用、仲間まで失うという、まさに踏んだり蹴ったりの経験でした。

(構成=福光 恵)