コンピューター革命がもたらしたもの

コンピューター革命によって、わたしたちの読書習慣も変わりました。バーカーツはこう指摘しています。「本から画面への変化は、知識とは何かという感覚に決定的な影響を与えた……ニュートンの物理学からアインシュタインの物理学への変化と同等かもしれない」

本に没頭し、登場人物たちの世界にすっかり入り込む能力は危機にひんしています。かわりに、ネットサーフィンのように本を流し読みするだけです。わたし自身も数カ月前に愛読書の1冊であるヘンリー・ジェイムズの『鳩の翼』(講談社)を読んだときに、このことを実感しました。

10代だったわたしは、1つの世界を創造するジェイムズの才能を楽しみました。その世界での「行動」は、批評家ピーター・ブルックスがかつて「意識のメロドラマ」と表現したものです。登場人物たちが静かな薄暗いベニス風の客間で、複雑に織りまぜた会話をしながらのんびり過ごしているとき、若いわたしは想像でその中に加われる喜びに浸りました。最初にその本を読んだときは、会話の機微を少しも見逃さないように、同じペースでゆっくりと読みすすめたものです。