「KSK2」で税目横断的なチェック可能に

さらに今年、さらなる大きな変化が加えられることが決定しています。

それは2026年9月に本格稼働予定の次世代基幹システム「KSK2(国税総合管理システム2)」です。

現行のKSKは1995(平成7)年から導入が始まり、30年以上が経過した古いシステムです。このシステムを税務署は税務調査に活用してきましたが、課題がなかったわけではありません。

最大の課題は、税目ごとにデータが縦割りで管理されている点でした。所得税の情報と法人税の情報、相続税の情報が別々のデータベースにあるため、それらを突き合わせるには職員の手作業が必要でした。

KSK2では、すべての税目のデータが統合管理されます。たとえば、個人の確定申告の内容と、その人が経営する法人の法人税申告の内容を、システム上で自動的にクロスチェックできるようになります。たとえば、「法人から社長個人に毎月支払われている家賃があるのに、社長個人の確定申告に不動産所得の記載がない」といった不整合を、人手をかけずに検出できるわけです。

AI税務調査時代の現実的な対策

ここまで読んで、「どうすればいいのか」と不安になった方もいるかもしれません。しかし、対策はシンプルです。

最も効果的な対策は、初めから正しい申告をすることです。当たり前のことを言っているように聞こえるかもしれませんが、これが基本です。AIがどれほど高精度になっても、AIが見ているのは数字のパターンの不自然さですから、正確な申告書に「不自然なパターン」は生じにくいのです。

もうひとつ重要なのが、経費などについて「きちんと説明できる状態」を作っておくことです。

AIは数字のパターンだけで判断しますが、その文脈まで読めるとは限りません。たとえば、大型の設備投資をした年に経費が急増したとして、それが正当な理由による変動なのか、不正な経費の水増しによるものなのかは、数字だけでは判断できません。

そのためにおすすめしたいのが、確定申告書の収支内訳書の備考欄や、青色申告決算書の「本年中における特殊事情」欄の活用です。「○月に店舗改装のため設備投資を実施」「大口取引先からの受注により売上増」といった一言を記載しておくだけで、数字の背景が伝わります。AIがリストアップした候補を人間の調査官がチェックする段階で、「なるほど、こういう理由か」と判断する材料になります。

領収書や請求書といった証拠書類も、申告後に捨てずに保管しておくことが大切です。青色申告者の場合、帳簿は7年間の保存義務がありますが、義務の有無にかかわらず、「聞かれたら答えられる」状態を保っておくことが、安心につながります。