「真珠湾ジョーク」でも動じなかった高市首相
象徴的だったのが真珠湾ジョークだ。
トランプ大統領は記者から、「イラン攻撃を事前に同盟国に知らせなかったのか」と問われ、逆に「ではなぜ日本は、真珠湾攻撃を事前に知らせなかったのか?」と切り返した。
ニューヨーク・タイムズによれば、高市首相は目を見開き、質問をした日本人記者のほうを見た。腕を組んだまま、発言はしなかったと伝えた。
日本側では、歴史に関わる発言に対してその場で言葉を返さなかったこと自体が、対等性を守れなかったように映った。
しかしアメリカで問題視されたのは、高市首相の反応ではなく、トランプ氏の発言のほうだった。
戦後80年を経て、日米関係の価値が多くの人に共有されている中で、現職大統領がこのような歴史を持ち出すことに対し、SNSではむしろ「アメリカ人として恥ずかしい」などの批判の声が目立った。
相手の弱点を突くのはトランプの常套手段
実際、トランプ大統領が相手の弱点や歴史問題を突きつけるのは、珍しいことではない。
ウクライナのゼレンスキー大統領の服装を揶揄したことは記憶に新しい。南アフリカのラマポーザ大統領の目の前で、自国内での「虐殺」のビデオを見せた。ドイツのメルツ首相との会談では、アメリカがナチスドイツからフランスを解放したノルマンディー上陸作戦を持ち出した。
ワシントン・ポストは、トランプ氏が各国首脳との対立を常態化させていると指摘する。テレビ中継される会談を、同盟国に対して圧力をかける機会へと変えているという。また同紙は、各国首脳はライブ配信される場での対立がもたらすリスクと、大統領との関係を改善できる可能性とを天秤にかけざるを得ないとも伝えている。
こうした構図の中で、相手に心理的な圧力を与えること自体が、交渉の一部として機能していると見ることもできる。
しかし高市首相は結果的にこの挑発に乗らず、感情的な対立を避けた。この対応は、アメリカの文脈では「相手のゲームに巻き込まれなかった」という意味で、うまく切り抜けたという評価につながる。
もっとも、ここにはもう一つの現実がある。トランプの真珠湾ジョークは明らかに相手へのリスペクトを欠く発言であり、「品位のない振る舞い」と批判されるべきものだ。しかし現実には、日本を相対的に下に置き主導権を握るという意味で、政治的にはトランプ氏の「勝利」でもあった。

