称賛を強める「戦略」で軍艦派遣を焦点化させなかった

ファイナンシャル・タイムスは、トランプ氏が公の場で軍艦派遣を迫る可能性を、日本政府が懸念していたと報じている。その上で、日本側が「高市首相はトランプ氏への称賛を強める方針である」と説明していたことを伝えた。

賞賛と大規模な投資・経済協力の提示を組み合わせることで、日本が軍艦派遣に消極的である点から、会談の焦点とならないようにする判断があったと報じている。

実際、会談では軍艦派遣は大きな議題とはならず、こうした点も含めて、高市首相が「無傷で乗り切った」と評価される一因と考えられる。

対トランプで有効な「好き嫌いを超えた戦略」

日本人が感じる違和感の背景には、「どう振る舞ったか」という意味での品位の問題がある。

外交は国家の格を示す場でもある。強い相手に対しても一定の距離を保ち、対等に見えることが重要であり、それが損なわれたと感じられたとき、人々は違和感を覚える。

しかしトランプのアメリカでは、その評価軸は、品位ではなく成果へと大きくシフトしている。

トランプ氏はしばしば「まるで王のように振る舞っている」と批判されるが、その背景には政権や共和党内で、公然と異を唱えるのが難しい現実がある。反対すれば、次の選挙で勝てないばかりか、支持者から激しい攻撃を受けることもある。そのため、過剰とも言える称賛が常態化している。

ヴァンス副大統領の「トランプはアメリカ国民の意思そのもの」、ステファニク下院議員の「現代史で最も強い大統領」、キャリー・レイクの「この国を救えるのは彼だけ」など、例を挙げればきりがない。

もちろんこうした発言に不快感を覚える人も少なくない。

しかし対トランプ氏の場合、それは単なる媚びではなく、相手の性格と力関係を踏まえた戦略として読まれる。

少なくともアメリカの報道や反応を見る限り、「好ましい振る舞いかどうか」ではなく、「目的に対して有効だったかどうか」の判断なのだ。

ある中国系アメリカ人は「彼女の立場としては、ああ言うしかなかったと思う」という感想を共有してくれた。この言葉はまさに「好き嫌いを超えた戦略」を端的に表している。