オンライン取引所破綻で警察が出動

深圳(シンセン)では2月、取引プラットフォームの崩壊が発覚。数万人が被害を受けた。

金取引の中心地・水貝に拠点を置くオンライン貴金属プラットフォーム「JWR」が突然経営破綻し、投資家の損失総額は100億元(約2100億円)を超えた。

金現物価格の急騰で含み益を得た投資家が一斉に利益確定に走ったが、プラットフォーム側に支払い原資はなく、流動性危機に陥った。週末には数百人が同社オフィス前に押し寄せて返金を要求し、警察が出動する事態に発展した。

香港英字紙のサウスチャイナ・モーニングポストは、中国の「金熱狂(gold fever)」に端を発すると指摘している。

崩壊の引き金は、JWRが採用していた「プレプライシング(事前価格設定)」と呼ばれる取引モデルにあったと同紙は分析する。

公認の貴金属取引所を通さず、プラットフォーム自身が取引の相手方となり、将来の金・銀価格について投資家と個別に合意する仕組みだった。SNSで取引の始めやすさと高いレバレッジを宣伝し、個人投資家を大量に集めていたが、同社には十分なヘッジも資本準備もなかった。金価格が急騰して投資家が一斉に換金を求めると、たちまち支払い不能に陥った。

広州を拠点に複数の私募資金調達紛争を手掛けてきた弁護士は、「このような私的投資プラットフォームの崩壊は最近、著しく頻繁になっている」と懸念を示す。

金塊と金貨のイメージ
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中銀の買い増しに国民が踊らされた

悲劇の発端は、中国全土を覆った空前の金投資ブームだった。

2025年、中国の金市場はあらゆる記録を塗り替えた。金業界の国際業界団体のワールド・ゴールド・カウンシルのデータによると、中国のゴールドETF(金価格に連動する上場投資信託)への流入額は1120億元(約2兆3250億円、金133トン相当)と、過去最高に達した。

国際的な金価格の上昇などを背景に、金市場に資金が殺到。年末時点の運用資産総額は前年比243%増の2420億元(約5兆1900億円)に膨張した。

金が中国の人々を虜にしたもう一つの理由が、中国人民銀行の動きだ。同行は2025年を通じて毎月、金の購入を公表した。積み増しは14カ月連続に及び、年間の追加量は計27トン。年末の公式保有量は2306トンに達し、外貨準備の8.5%を占めた。

ワールド・ゴールド・カウンシルは、こうした購入額の公表が個人投資家の購買意欲を刺激し、地金販売の増加やETFへの資金流入につながったと分析している。国家の行動が、そのまま投資シグナルとして受け止められたのだ。

中国が金相場の主役に躍り出たという認識は、ウォール街にも広がっている。米ビジネス誌のフォーチュンは2025年10月、アポロ・グローバル・マネジメントのチーフエコノミスト、トルステン・スロック氏の分析を伝えた。