業績の立て直しを図るも失敗に終わる

アイロボットにとっては、ロボット開発がもともとの業務であり、家電メーカーではなかったため、掃除機の従来の概念に左右されることなく新たな製品を生みだせたのではないだろうか。まったく新しい分野を切り開くためには、従来の概念から自由であることが必要だ。

これは、時計メーカーでなかったアップルのアップルウォッチの成功にも共通するかもしれない。アップルが目指した時計と既存の時計メーカーが目指したスマートウォッチでは、どちらが斬新な機能を開発する発想を持ちうるかという違いである。

アイロボットの売上は2021年にピークを付け、2022年には大きく減少した。これには、半導体不足による製品供給の停滞、欧米での景気・消費後退による販売減などが影響した。同年8月には、米アマゾン・ドットコムによるアイロボット買収が発表された。

アマゾンにとってはスマートホーム事業の強化を図る狙いがあった。一方のアイロボットもアマゾンとの提携によって、業績の立て直しを図るはずだった。しかし、2024年1月に欧州の規制当局の阻止により買収計画は断念させられた。

高いシェア率なのに利益率が伴わないワケ

その後も他社と会社売却交渉を続けていたが、2025年10月に交渉相手が撤退したことを発表している。この間、アイロボットの売上はさらに縮小していき、一方、中国勢の同業が売上を伸ばしていった。北京ロボロック・テクノロジーやエコバックス・ロボティクスなどで、これら中国勢は低価格を武器にシェアを獲得し、掃除ロボットの機能の革新も進めていった。

アイロボットを含めた3社の売上合計は、2022年から2024年までの3年間は大きくは増えておらず、アイロボットがシェアを奪われていった構図に見える。アイロボットの営業利益の動きはどうだったのだろうか。同社では、2003年までは営業損失が続き、その後黒字化したものの、2009年までは少額の利益にとどまっていた。

利益が本格的に立ち上がったのは2010年以降である。売上営業利益率は2010年以降上昇し、2020年まで10%前後の水準だった。当時、ルンバは掃除ロボット市場で非常に高いシェアを有していたが、利益率はダントツに高かったわけではない。

それは、販売管理費、とくに広告費の負担が大きかったためである。掃除ロボットの新しい概念と機能を持つ製品の認知度を高めること、製品の使い方を十分に説明することなどのため、多額の広告費が必要だったのだ。