品質と価格のバランスが悪いと売れない
価格のグラデーション化戦略の狙いについて、安藤氏は次のように説明する。
「お客様の二極化を避けるためだ。例えば海老カツバーガーを食べて、『この値段でこれぐらい美味しいなら、海老エビフライバーガーは多少高くてももっとおいしいだろう』と考えてもらう。『高いものは自分には関係ない』ではなく、どのメニューも『自分ごと』として捉えていただけるようにとの狙いだ」
キモとなるのが、財布の紐がかたいお客も、品質に対して妥当と考える絶妙な価格設定だという。
「お客様は賢く見抜いている。価格と質のバランスの良い商品が3つ並んでいたらそれと分かる。反対に、品質がいいものが安すぎると警戒されてしまう。以前、シンボリックに黒毛和牛の一頭買いバーガーを690円で発売したことがあるが、品質と価格のバランスが悪かったため、期待ほど売れなかった」
ちなみにその流れを汲むのが2025年11月発売の「モスの匠味(たくみ) 黒毛和牛のダブルチーズバーガー」(890円)。黒毛和牛を使い、合わせる食材もチーズ、オニオントマトソースだけと、肉をしっかり味わえるバーガーだ。赤身肉を足してあっさりめに仕上げ、価格のバランスも調整したことで、150万食を販売した。
価格帯を決めてから食材で調整する方式
価格のグラデーション化戦略では品質とバランスの良い価格設定が要求されるが、モスフードサービスではどのように決めているのだろうか。まず決め方としては、食材にかかる原価を足し上げて価格を決めるのではなく、まず価格帯を決めて、食材で調整するという方式をとっている。
そして大前提として「バーガー単品で1000円を超えないこと」が共有されているそうだ。これはファストフードサービスとしての長年の経験からの感覚がもとになっている。
また年に1〜2度の頻度で、顧客の価格感受性テストを行っている。モスバーガーを知っている人と知らない人双方にインタビューし、絶対単価=その商品に対して納得できる価格と、相対単価=他のチェーンと比べた場合に納得できる価格をそれぞれ調査するというものだそうだ。
これにより商品の価格の上限と下限を決めており、モスの40〜50アイテムのうち、この範囲内に入っていないのは2アイテムのみ。そのうちの一つはセットメニューとのことだ。
以上、モス好調の理由について、価格の面から解説してきた。原価率が高いことに加え、客の価格の感覚を見極めた価格設定によって、どの価格帯の商品も売れやすくなり、より広い客層の開拓にもつながっていると思われる。




