美白は本当に魅力的なのか。顔研究の第一人者である山口真美氏は「ルッキズム問題の影響で、世界的には『白い肌が良い』と言いにくくなった。現に、“魅力的”とされる肌の色が変わってきている」という――。

※本稿は、山口真美『美人はそれほど得しない? ルッキズムの科学』(ハヤカワ新書)の一部を再編集したものです。

肌の調子を確かめる女性
写真=iStock.com/lielos
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世界でNGになった「ホワイト」

ルッキズムの問題の影響で、「美白」という言葉が化粧品業界のコマーシャルから消え、「ブライト」という言葉がよく聞かれるようになりました。ホワイト(白)という言葉はNGで、ブライトならば許されるというわけです。同様の理由で、小学校で使う絵具やクレヨン、色鉛筆から「肌色」という色の名前も消え、「薄だいだい色」となりました。

いずれも人種にまつわる肌の色の問題が原因です。白い肌を良いと安易に口に出すことがはばかられるようになったのです。そもそもの背景には、これまでハリウッド映画をはじめ、さまざまなメディアで白人を良いものとした情報を流し続けてきた歴史があります。

こうした歴史的な背景が人々の潜在意識の判断を作り上げていることを、マーザリン・バナージらは示しました。彼らの研究によると、白人のみならず黒人の中にも、潜在意識で白人を良い人と判断する傾向があるとのことなので、驚くべき影響力です。

こうした実証的なデータもあって、情報を提供し続けたメディア側も責任を持ち、バイアスのある情報を排除すべく動いている。それが現在のアメリカを中心とする西欧社会の姿勢でしょう。白い肌や白人が良いなどといった「白=良い」とする連想をメディアで流し続けることによる連合学習を避けるため、細心の注意を払う意志があるのです。

「白い肌」は本当に魅力的なのか

一方で、日本では、今でもファッション雑誌などに白人モデルが使われています。直近で問題になったのは、洗剤のコマーシャルに女性の白人モデルを使い、汚れを落として白くなるというイメージに直結させるものです。この広告戦略は、かなり厳しいものでした。

さて、肌に関するNGの知識を頭に入れたうえで、人の本性の話に入りましょう。白い肌は、本当に魅力的なのでしょうか。美白好きな日本人からすると納得がいかない結果なのですが、実は最近の研究は、真逆の結果を示しているのです。

あらためて進化心理学からすると、魅力は遺伝子を残すためのアピールです。動物社会でいえば、体格が大きくて子孫を守れることですが、人間の場合は、健康であることが最大のアピールとなるようです。

逆に言うと、生物は不健康な個体を排除する性質があり、不健康は忌避されます。生物をベースとしたかなり過激な考えに立てば、自分の子どもに健康な遺伝子を残すために、健康的な相手を配偶者に選ぶよう遺伝子によって操作されているというわけです。

たとえば、イギリスの著名な動物行動学者デズモンド・モリスは、赤い唇や頬の赤さの魅力は、健康さを示すものだといっています。化粧は社会や時代によって変わりますが、1980年代には、血色の良さを示すこれらのシンボルが化粧にも生かされていました。白い肌に赤い紅を引いて頬を赤く染めるというクラシックな化粧法は、これらを際立たせる演出だといいます。