夫は「株の利益は自分のもの」と主張
調停期日に来る夫は、よれよれの服を着ていて、外見からはとてもそんな資産を持っている人には見えません。しかし履歴を見ると、結婚してすぐに株式投資を始めていて、着実に資産を増やしていたのです。
それが明らかになると、夫は「株の利益は自分の才覚で得たものだ。だから妻への財産分与の対象にはならない」と主張しました。
しかし、婚姻中に形成された財産は、原則として夫婦の共有財産です。株式投資の利益ももちろんその対象です。
さらに、マンションも値上がりしていて、退職金の見込み額も財産分与の対象になります。
これらを計算すると、夫婦の財産はかなりの額になっていました。
最終的にA子さんは、約4000万円の財産分与を受けて離婚することができました。
4000万円が入金された時、A子さんは「信じられないです」と言いました。私は「今まで切り詰めて頑張ったご褒美だと思います」と伝えました。
投資の利益も財産分与の対象に
A子さんのように、結婚してから渡される生活費が何年経っても同額のままという夫婦は、実は珍しくありません。「最初に決めたことだから」と、夫の収入が上がっても、昨今のように物価が上がっても、時には妻が病気になって無収入になっても、据え置きのままなのです。
収入も貯蓄も全く知らされず、夫が何にお金を使っているのかもわからないまま、妻はやりくりを強いられていることが多いです。
こういう夫は決まって内緒で貯蓄をしているのですが、中には株式投資をしている人もいます。最近は投資ブームもあり、さらに増えている印象です。
生活費を極限まで切り詰め、「妻や子どもに使わせるくらいなら投資に回す」という考え方の人もいます。そのため、質素な見た目と生活ぶりからは想像できないほど蓄財をしているのです。
妻は限界にまで追い詰められ、離婚を考えるのですが、離婚の手続きの過程で投資で得た利益の存在が発覚すると、夫は「株の利益は自分の才覚で得たものだから、財産分与の対象にはならない」と言います。
確かに、特殊な才能によって得た財産が共有財産にならないと認められる場合もありますが、それは著作権収入のある芸術家など、極めて特殊な例です。医師でも認められることはほとんどありません。
そのため、結局は半分に分けることになります。
生活費を極端に切り詰めて投資を続けて資産を増やしたとしても、そのせいで配偶者に愛想を尽かされて離婚されてしまうのでは本末転倒です。
お金を貯めることも大切ですが、結婚生活では、お金を一緒に使ってもいいと思える関係をつくることも、同じくらい大切なのかもしれません。

