暗記や反復学習を疎かにしなかった
教育のIT化というと、個別対応や応用問題の付加などが思い浮かぶが、エストニアはITを教育の「質」を担保するために活用し、基礎知識・基礎計算を徹底することを重視し、とりわけ理数系で結果を出している。
「自主性」の呪縛を背負うことなく、暗記や反復学習を重視し、「学ぶべき知識」をデータベース化した上で、応用力や思考力を伸ばす方針を取り入れている。暗記と思考を切り分け、暗記を軽視しなかった点は、フィンランド式教育とは一線を画している。
国家が教育のIT化に関わるもう1つの利点として、教師によってばらつきがでにくくなる点がある。専門家の「集合知」として国家が教育プラットフォームを提供すると、教師はその方針に従って指導するので、教師の考え方が違っていても教える内容にばらつきが出にくくなる。
一人の突出した教師の能力はフルに発揮しにくくなる可能性もあるが、全体の質を高める機能は高めやすい。
エストニアは、重要なことを覚えた上で考える力を養うという教育の順序を崩さなかった。その結果、IT分野を中心に国際競争力を高め、教育と産業が連動する構造を作り上げたのだと考えられる。
日本人の計算力を支える九九暗唱
現在は「暗記」という言葉に悪いイメージがついているが、日本人の高い計算能力の土台に九九の暗唱があることに異論は少ないだろう。数学やITの天才を量産しているインドの一部では、初等教育で十九かける十九まで丸暗記させていると聞く。
基本を「詰め込むこと」は、考える力を高めるためにも重要である。
どんな学科であっても、かならず覚えておくべき「基本」がある。実際は、学科に限らず、仕事やスポーツや趣味、あるいは、ゲームや漫画を読むことにも言える。たとえば、語学でいえば単語と文法が、この場合の基本に当たる。
一般的に日本人が英語を苦手とするのは、難しい単語を暗記しすぎたり、文法をやりすぎたからではない。日本語と英語が語彙・文法・発音など多様な面で違いすぎるからである。

