「暗記は悪」が「理系離れ」を引き起こす
思考力は、知識の上に積み重なる能力である。覚えるべきことを覚えていない状態で考えさせても、思考は成立しない。
基礎計算を十分に訓練しないまま応用問題に向かわせれば、生徒は混乱するだけである。
理数系では、公式を覚えて、それを演習によって身につける学習方法が中心になる。そこでは最初に公式がどのように導かれるかを理解することが大切だが、だが、それだけで十分な理解が得られないことは多々ある。何度も演習して公式を使っているうちに、公式の本質がわかってくるということも往々に起こるものだ。
反対に「暗記は悪」と思い込み、公式の暗記を避け、機械的に公式に当てはめる演習を避ければ、結果的に数学への苦手意識が広がり、理系離れが進む可能性がある。
その結果なのか、理数系人材不足は統計にも表れるようになり、議会でも繰り返し議論されている。近年は医師やエンジニアの不足が深刻化し、国外から人材を招かざるを得ない状況に陥っている。
教育のIT化に成功したエストニア
フィンランドが学力崩壊に直面している一方で、バルト海を挟んだ隣国がPISAでトップクラスに躍り出ている。それが、2004年にEUに加盟したバルト三国のエストニアである。
PISAには2006年調査から参加しており、数学的リテラシーでは右肩上がり、科学的リテラシーでも上位を維持している。
エストニアは旧ソ連圏から出発しながら、早くからITを国家戦略の柱に位置づけて成功し、教育のIT化も先進的に進めてきた。また、その教育方針は理念先行ではなく、これまでの教育の延長線に、教育の質をITで高めるという現実的な方針が含まれた。
エストニア政府は、現在も教育分野を含む国家全体のデジタル化戦略(National State Digitisation Development Programme 2021-2030)を進めており、政府が教育におけるデジタル化やICT利活用を支援している。また、国家(教育庁)がデジタル教材・学習ツールの開発・提供を行っており、教師向けと生徒向けにデジタル学習教材やツールを集約したプラットフォームを提供している。
コロナ禍の時期、各国が教育の停滞を招く中で、すでに教育のデジタル化が進んでいたエストニアは、従来の教育方針を進める好機となった。

