糖質よりたんぱく質を優先する
たしかに、加齢とともに胃腸の機能は落ち、食べたものを消化吸収する能力は低下していきます。胃もたれしやすくなるのも事実です。
しかし、消化吸収力が落ちているからこそ、栄養価の高いものを意識してとらなければならないのです。
「消化によいもの」というと、みなさんは何を思い浮かべるでしょう。やわらかく煮たうどん、おかゆ、そうめん、食パン……。これらはたしかに胃腸への負担は少なく、消化は抜群にいいでしょう。しかし、栄養学的に見れば、これらはほとんどが糖質(炭水化物)です。
体を構成する筋肉、骨、血管、そしてホルモンや免疫細胞の材料となるのはたんぱく質です。消化がいいからといって、うどんやあっさりした和食ばかりを食べていては、肝心のたんぱく質がまったく足りません。
胃腸をいたわっているつもりが、実は「体に材料を与えない食事」になってしまっている方は大勢います。
日本人の多くは“隠れたんぱく質不足”
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」によれば、65歳以上の高齢者が一日に摂取すべきたんぱく質の推奨量は、男性でおよそ60グラム、女性で50グラムとされています。さらにいうと、「体重(キログラム)=一日に必要なたんぱく質の量(グラム)」です。
つまり、体重60キロの人は一日60グラム、体重70キロの人は70グラムのたんぱく質をとる必要があります。
「なんだ、そのくらいか」と思うかもしれませんが、もともと食文化が穀物中心である私たち日本人は、世代を問わずたんぱく質不足に陥る傾向があります。
実は、高齢になると消化機能が落ちるので、「体重×1.2」グラムのたんぱく質をとるのが理想とされています。つまり、なおのこと意識してとるようにする必要があるのです。
よほど意識して肉や魚、卵を食べない限り、必要量のたんぱく質を確保するのは大変です。若いころと同じ感覚で、「今日は食欲がないからお茶漬けでいいか」と食事をすませてしまう日が続けば、たんぱく質不足は深刻化します。
その先に待っているのは、体力や気力の低下だけではありません。ウイルスと戦う免疫力の低下、頭の回転を支える認知機能の低下、そして骨密度の低下……。これらの老化現象が、ドミノ倒しのようにやってきます。
いつまでも若々しい心と体でいたいなら、これまでの健康常識を疑ってください。消化能力の低下を補うために調理法を工夫し、サプリメントの力も借りて、貪欲にたんぱく質をとりにいく。それこそが、60代以降の方にふさわしい食生活なのです。

