「聞くこと」が意外と難しいワケ
人が話すスピードは、およそ1分間に120から160語。しかし、脳は1分間に400~600語を処理できるといわれています。
つまり、「話を聞いている間に脳の処理能力が余ってしまう」のです。その「余白」で、ついつい以下のようなことを考えてしまいます。
・自分の考えごとに意識が向く
・相手の話の途中で勝手に結論を予想してしまう
・次の予定やスマホの通知など、別のことに気をとられる
このように、「聞いているフリ」をしていても、実は意識が別のところに飛んでしまいやすいのが人間の性です。
ですから、聞くことには意識的な努力と工夫が必要なのです。
コンサルタントになったばかりの頃、私はあるコミュニケーションスクールで、自分の商談(折衝)の様子を録画した映像を見ました。売り込み役として参加し、相手が社長役となってやりとりをするロールプレイでした。
初めは「聞く姿勢」ができていました。表情や相槌に気を配り、相手の話を引き出すことを意識していました。
信頼構築が「壊れる瞬間」とは
しかし映像の後半では、様子が一変します。次第にアイコンタクトが減り、手元の資料をめくりながら「何を伝えようか」と自分の話に意識が向き始めていました。
気づかぬうちに、聞く姿勢が崩れ、話すことに偏っていく……。
その様子は、見ていて愕然とするものでした。結果、社長役の方から「後半はやや押しつけがましく感じた」と率直なフィードバックがありました。
この体験は、聞くことの重要性と、それがいかに簡単に失われるかを身をもって学ぶ機会となりました。
独立したばかりのひとり社長にとって、最初の悩みは「どうやって仕事を取るか」ではないでしょうか。
自分の商品やサービスを理解してもらいたい――。その気持ちが強くなると、つい口数が多くなり、「伝えること」を優先してしまいます。
怖いのは、「聞くことの大切さ」を知っていたはずなのに、気づかぬうちに「自分中心の話し手」になってしまうことです。
その瞬間、相手との信頼構築は壊れます。逆に距離を感じさせてしまうのです。

