1時間かかる作業を10秒で完遂
ナビタスクリニックでは、海外での活動経験が豊富な杉浦康夫医師(小児科)が「解読」していた。一人あたり30分〜1時間を要するそうだ。こんなに時間がかかると、他の患者さんを待たすことになる。他の患者さんの迷惑になるし、経営難に喘ぐ医療機関では続けることができない。
この問題をChatGPTが解決してくれるかもしれない。試しに、インド人患者が持参したワクチン接種歴の資料をスマートフォンで撮影し、ChatGPTに読み込ませてみた。具体的には、撮影した画像を送り、「この予防接種記録を読み取り、ワクチン名を一般名(国際的な成分名)に変換した上で、接種日とともに表形式で整理してください」と指示する。するとChatGPTは、手書きの文字や現地の商品名を解読し、日本の医師が理解できる形式で接種歴を表にまとめてくれた。この作業に要する時間は10〜30秒程度だ。
杉浦医師がチェックすると、「印刷されたものについては、表示された結果は正確だった」という。手書きについては、3割程度のエラーを起こすという。医師によるチェックは欠かせないが、ゼロから全てを自分で読み解くのに比べれば、負担は格段に軽い。
念のために申し上げるが、このような場合、患者の氏名などプライバシーに関わる情報は撮影していない。また、ChatGPTには入力した内容をAIの学習データに使わせない設定があり、それを利用している。いわゆる「学習なし」モードと呼ばれるもので、患者データが外部に流出したり、他の目的に利用されたりするリスクを最小限に抑えるためだ。医療情報は最も慎重に扱うべき個人情報であり、AI活用においてもこの点は十分に配慮しなければならない。
医療現場で活用できるAIアプリ作成
話を戻そう。私は、この結果に驚いた。これは業務効率を劇的に改善する可能性があるからだ。患者・家族、さらに医療機関にとってもありがたい。現在、杉浦医師と平川氏で、AIを活用したアプリを作成し、読み込みの精度や業務効率への影響を検証する臨床研究を準備中である。
近年、インド人以外にもネパール、ベトナム、さらにアフリカからの受診者も増えている。杉浦医師は「対象者を増やし、半年以内には結果を発表したい」と言う。外国人患者の増加は全国的な傾向であり、この研究の成果は、ナビタスクリニックだけでなく多くの医療機関にとって参考になるだろう。

