多くの人が「よい姿勢」の意味を分かっていない
私たち人間は、本来は横方向に使うほうが理にかなっている「1本の背骨」を、どういうわけか垂直に立てて、上半身を支えなければならなくなりました。背骨は背中側、つまり後ろ側を通っています。だから油断していると、上体を支えきれず、どんどん後ろに出ていって猫背になっていきます。
それを回避するために背筋をピンと伸ばすと、今度は肩や腰などにダメージが加わってしまいます。もはや八方ふさがりです。いえいえ、そんなことはありません。もともと四足歩行用の骨格だとしても、人間の骨格は、正しい姿勢をとれば、絶妙なバランスで人体を安定させることができます。
しかし、多くの人はそのことを知りません。知らないから、骨格が不安定なままで、無駄に一生懸命に「よい姿勢」をつくろうとします。私たちが「人体の骨格の理にかなった姿勢」になるためには、「胸骨を意識する」、これだけです。
胸骨に「小さな矢印」を置くだけで、人体のバランスは一瞬にして整います。小さな矢印をナナメ上側に向けると、胸骨から骨盤の後ろに向かってナナメ下の力が生まれます。体を横から見たとき、ちょうど「筋交い」になる力です。筋交いとは、建物の柱と柱の間にナナメに取り付けられる補強材のことです。
スキマ時間でも体のメンテナンスはできる
さて、ここからは胸骨への意識を高めて、胸の矢印を育てるための実践レッスンを紹介します。まずは、文章とイラストを見ながら、ひと通りやってみてください。
これらは、さまざまな角度から「胸骨を意識する」「矢印を育てる」「骨格を整える」練習ですから、気に入ったものを中心に続けていってもらえればと思います。仕事や家事のスキマ時間や、テレビや動画を見ながらなど、ちょっとした体のメンテナンス法として活用していただければ幸いです。
胸骨の矢印をスムーズに伸ばせない人は、胸骨の裏側の背骨(胸椎)がガチガチになっています。胸椎は動かしにくい部位なので、多くの人が普段は気にかけず、ほとんど使っていません。だからガチガチにかたまっている人が多いです。
そうなると、胸骨が動きにくくなり、腰だけが反りかえる「反り腰」になったり、背骨が立たず「猫背」になったり、首が「ストレートネック」になってしまいがち。
すなわち、胸骨の矢印をスムーズに伸ばすには、胸椎の柔軟性が必要なのです。胸椎の柔軟性を高める体操が、「胸骨体操」です。さっそく始めましょう。

