民主党の鳩山政権も300議席を得たが、独善的なマニフェストを振りかざし、財源や政治手法をめぐって霞が関と対立し、2010年参院選で菅直人首相(当時)の「消費税10%」発言で敗れた。12年に野田佳彦首相(当時)が党の分裂を引き起こしながら、消費税率10%を目指す社会保障・税一体改革を自公両党の協力で成し遂げたこともあって、衆院選で大敗し、政権を失っている。
中曽根政権と民主党政権に共通しているのは、消費税(売上税)や社会保障などの制度設計に当たって、小さな合意を積み上げて結論を得ていくのではなく、トップが300という数を背景に一気に押し切ろうとしたことだ。数の驕りを世論が感じ、大勝の後の大敗という振り子現象を呼び込んだと言われている。
「私は年度内成立を諦めていない」
高市政権も「シン・300祭り」を避けられないだろう。その兆しが現れたのは、首相が2月13日、首相官邸に自民党の梶山弘志国会対策委員長や萩生田光一幹事長代行、松山政司参院議員会長らを呼び、特別国会では与党主導の国会運営を徹底するよう指示したことだ。
首相は「26年度予算案は重要だ。私は年度内成立を諦めていない」と述べ、早期成立に向けて審議日程を短縮するため、与野党の質問時間を大幅に削るよう求めたという。行政府の長が国会運営に直接介入するのは、極めて異例と言える。
予算審議時間は衆院で70~80時間が通例とされ、少数与党だった石破政権下の昨年の通常国会では「熟議」を求める野党に抗えず、92時間まで積み上った。今回の特別国会では、3月13日の予算案衆院通過を目指して、2000年以降で最短だった66時間30分をも下回る50時間台に抑えるため、集中審議や省庁別審査を予算成立後に回す奇策も首相周辺で検討されている、と報じられている。
衆院の各派協議会は17日、27ある常任・特別委員長、審査会長について、与党に25、野党に2を配分することで合意した。自民党は当初、全ポスト独占を試みたが、最終的に懲罰、消費者問題特別の両委員長を中道改革に割り振った。自民党は昨年の衆院選で少数与党に転落し、野党に最大13の委員長・会長ポストを握られたが、その大部分を取り返した。
首相は、予算委員長ポストを奪還したことで、自身の答弁機会も減らしたい考えだ。首相は昨年の臨時国会で、立憲民主党の枝野幸男予算委員長(当時)に首相答弁を頻繁に振られ、不満を募らせていた。
参院では予算委員長を自民党が握っているとはいえ、少数与党のままだ。審議時間の短縮で与野党が合意することは難しい。予算の年度内成立が無理筋だとされる所以である。
「謙虚さや小さな声を聞く気があるのか」
首相は、1月に衆院を解散し、「経済後回し解散」(玉木雄一郎国民民主党代表)となどと批判されたため、体裁を取り繕おうとしているのだろうが、2~3週間程度の予算成立の遅れが実体経済に及ぼす影響はほとんどない、というのが永田町の常識でもある。国会運営を強引に進めてまで予算の年度内成立に拘る意味はないと言ってもいい。
高市首相は20日の施政方針演説で、食料品限定の2年間の消費税ゼロについて、政府と超党派を交えた「国民会議」で議論し、6月に中間取りまとめを行い、秋の臨時国会に税制改正関連法案を提出する方針を示した。

