財政規律の回復へ「連帯税」と「富裕税」

――「連帯税」とは?

【中村】国民全員が連帯し、国の借金を減らしていくための目的税です。例えば、所得が最も少ない層は月額100円とし、所得や資産が多くなるにつれて税額を増やしていき、最高は月に数十万円にしていいでしょう。米国では億万長者がけっこういて、先頭に立って巨額の寄付をしていますが、日本にはそういう文化が育っていません。いまこそ、「連帯税」を導入すべきです。

「富裕税」は、相続税の最高税率を大きく引き上げ、経済成長につなげる提案です。高年齢の富裕層に偏在する資産を若年層に移し、消費を活性化させます。雇用を生み出し、格差を縮小する税とも言えます。

――高額所得者や資産家の猛反対が予想されます。

【中村】そこは、工夫です。相続税率を引き上げる代わりに、生前贈与の非課税枠を思い切って拡大すれば、受け入れやすくなるでしょう。個人消費を盛り上げる切り札は、やはり、住宅の新改築です。贈与税を先に徴収して、住宅を取得したときに還付する方法もあります。そういう仕組みができれば、眠っていたおカネが使われるようになり、家具や台所用品など幅広い消費につながることも期待できます。

連帯税も富裕税も、負担の面ばかりが受け止められないように、それが将来の世代を支え、いまの時代の成長や雇用拡大、より豊かな住生活につながることを、政府は発信していかなければいけません。大切なのは、世の中に「希望」の光を打ち出すことです。

パナソニック会長 中村邦夫
1939年、滋賀県生まれ。62年大阪大学経済学部卒業、同年松下電器産業(現パナソニック)入社。93年取締役、北米本部長、96年常務取締役、97年専務取締役、AVC社社長、2000年社長、06年より現職。07年から11年まで日本経済団体連合会副会長を務める。
(聞き手=街風隆雄 撮影=門間新弥)
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