「仁王像」にみられる微細加工の源流

2011年10月、豪州で開かれた「ワールド・ソーラー・チャレンジ」(WSC)で、東海大学が開発したソーラーカーが優勝した(写真)。2009年の大会に続く連覇で、動力源にはパナソニック製の太陽光発電システムとリチウムイオン電池による蓄電装置が搭載され、車体には軽くて強度が高い東レの炭素繊維の複合材が使われた。いずれも、環境対応の領域で世界の最先端をいく製品だ。
――パナソニックは、WSCで勝った東海大チームのスポンサーですね。

【中村】そうです。WSCは、豪州北部のダーウィンから南部のアデレードまで3021キロの区間をソーラーカーで縦断し、タイムを競う大会です。東海大チームには、住宅用太陽光発電システムで世界最高水準の変換効率を持つHIT太陽電池と、蓄電用に高容量のリチウムイオン電池を提供しました。HITは面積当たりの発電量が多く、住宅の屋根など限られた面積で発電するのに最適です。WSCでも搭載可能な面積が限られているので、ソーラーカーの性能向上に貢献できました。

リチウムイオン電池のほうは、円筒形で直径が18ミリ、高さが65ミリであることから「18650」と呼ばれています。独自の電極を採用し、最高水準のエネルギー密度を持ち、駆動時間の長期化と電池パックの軽量化が可能です。WSCでは搭載重量に制限があるため、「18650」が高い評価を受け、オランダや米国、シンガポールの大学チームにも提供しました。

――一般への自動車への実用化も、近そうですか?

【中村】いや、まだ課題が多い。一般の自動車には冷暖房が必要で、それに電力を充てると、走行可能距離が短くなってしまいます。冷暖房完備で500キロは連続走行できないと、普及範囲が限られます。発電量と蓄電量の増量が必要で、リチウムイオン電池による蓄電がいいか、あるいは燃料電池のほうが実用化が早いか、両にらみです。でも、この分野で日本勢が世界の最先端を走っていることは、間違いありません。