大学院を見直しπ型人間の育成を

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図3 情報処理技術者試験の合格者の推移
ICTを活用して「コンカレント」に新製品の設計・開発を進め、バーチャルな試作品で試験を重ねるには、メンバー全員がICTを使いこなす必要がある。だが、近年は大学受験で「理数離れ」が進み、情報処理技術者の国家試験の合格者は減少傾向にある(図表3)。この1月中旬に実施された大学入試センター試験でも、薬学部や理学部などは「就職に有利」などの理由で志願者が2けた増となったが、工学部は伸び悩んでいる。「ものづくり」の活路は、やはり人材の確保と育成にかかってくるようだ。
――製造業の課題のなかに挙げられた「グループ内に分散した生産技術や人材の集約とネットワーク化」ですが、技術者が持つ技能やノウハウの伝承はどうしたらいいでしょうか。

【黒川】「匠の技」だけではなく、材料などに関するノウハウまで含めて、いわゆる「暗黙知」をどう「形式知」の形に変えるかですが、そういう仕組みづくりには富士通も取り組んでいますが、日本全体で考えるべきことでしょう。全国の中小企業が持つ秀でた技能やノウハウを、1つひとつ、共通ソフトのもとでデータベースに蓄えていくことは、たいへん意味があります。クラウドを使えば、可能です。そうしたデータの蓄積と、それを使いこなすツール(仕組み)づくり、それを使える人の育成の3つを組み合わせていくことが、ひじょうに大事です。

「日本の『ものづくり』をどうするか?」と言えば、そこまで、つくり上げていかなければいけません。3つのなかで、最初の1つは、東京の大田区や東大阪市など、優れた技術を持つ中小企業が集まる地域でどんどん継承されずに失われてしまいますから、急ぐ必要があります。個々の中小企業には自前でやる資力がないでしょうから、世界でオンリーワンのような技術にはやはり国の支援が必要です。データベースに入れて、その技術やノウハウを世界中から買いに来るようにしてあげれば、日本の「ものづくり」を支えている裾野が強固なものになります。