グローバル経済下、日本企業のプレゼンスは低下する一方だ。競争力を強化するための産業再編について、筆者が課題と解決策を提示する。
小さすぎて遅すぎる危機への対応
危機管理の失敗の典型的パターンの一つに、Too little, Too lateという言葉がある。危機への対策の規模が小さすぎるうえに、対応のタイミングも遅すぎる、だから危機への対策として大きな効果がなく、かえって危機を増幅したり、よくても長引かせるだけ、というのである。
1990年代の日本のバブル崩壊後の金融危機への対応、最近のギリシャ財政危機を引き金にしたヨーロッパの金融危機への対応で、こうした批判がよくなされている。先日、新聞を見ていて、この言葉をついつぶやいた。携帯電話事業で富士通と東芝が事業統合をする、という記事である。統合が成立すれば、「一時は11社あった日本の端末メーカーはほぼ半分の6社に集約される」「富士通・東芝連合の国内シェアは約2割となり、シャープに次ぐ第2位メーカーが誕生する」と新聞報道にはある。
これだけ聞けば大きな産業再編が起きているようにも見えるが、しかし目を世界に転じればとてもこの程度の再編では「小さすぎる」というのがよくわかる。世界の携帯端末市場の規模は2009年に約11億台。その中で日本市場の占めるシェアはわずか3%。その小さな市場に富士通・東芝連合の統合前には7社の日本の端末メーカーがひしめき合っている。そして、この七社の世界市場でのプレゼンスは微小である。
その小さな日本市場の中で約2割のシェアをもつ第2位メーカーが誕生したとしても、世界市場でのシェアは0.6%にすぎない。片や、世界シェアトップのノキアのシェアは約38%、2位のサムスンが約20%。彼らの生産規模はそれぞれ、約4億5000万台、約2億台である。
富士通・東芝連合の生産規模が600万台強になる程度だから、ソフト開発にも部品調達にも規模の経済がかなり利くはずの携帯端末では、絶望的に差が開いてしまっている。
日本の携帯端末産業は技術的にはすぐれているが多くの企業(11社)が参入していて企業数がいかにも多すぎる、とはすでに10年以上前から言われていた。そして、ソフトウエア開発の負担が大きくのしかかってくるにつれて、現場は疲弊し、事業として収益は上がらず、どの企業も困っていた。
当時はすぐれた技術を活用して、海外へ打って出る戦略をとったところもあったのだが、国内と海外の携帯の規格が違い、海外用と国内用とダブルの開発をしなければならないことが足を引っ張った。国内対応に資源を割かざるをえないと考えた日本メーカーは海外戦略に大胆に資源を回せず、ここでもToo little, Too late で海外展開に失敗したのである。