飄々のウラにある無常観
1977年に「ギャンブル狂想曲/組曲 冬の情景」でついにレコードデビュー。ただロックではなく、アコースティック・ギター1本で自作曲の弾き語りというスタイルだった。
所ジョージの曲と言えば、「はだかの豚がいる スブタ♪」という5秒の長さしかない「スブタ」(2009年)など極めつきの珍曲ぞろいだが、ユニークな発想は当時から異彩を放っていた。なかには珍曲のはずがいつの間にか名曲に思えてくるものも。
「組曲 冬の情景」はフォーク調のしっとりした曲だが、詞は所ワールド全開。「雪だるま まわしげりくれたら ねころんだ」「雪だるまって まんまるい」といった意味があるようなないようなフレーズからはじまり、霜柱を歌ったパートでは「下北半島に しもがきた」とダジャレを挟み、さらには春が近づき、氷が溶けて一枚ずつ流れていく様を「1枚が2枚 2枚が4枚 4枚が8枚」と延々と2倍にした数字を羅列していく。
まさにシュールかつナンセンス。だがその詞を飄々としたキャラクターの所が淡々と歌うと、なぜか不思議な情感がある。誰もいない冬の風景が醸し出す無常観とでも言うのだろうか。
そしてその無常観のなかに、そのうち凄みのようなものさえ感じられるようになる。戦争に巻き込まれ、意図せず戦犯となって死刑判決を受ける庶民の姿を描いたドラマ『私は貝になりたい』(TBSテレビ系、1994年放送)で、主人公を演じて高く評価された俳優としての所ジョージもそこに重なる。
「うざい」「あけおめ」「メリクリ」
結局、他のタレントにない所ジョージ最大の強みは、ミュージシャン、シンガーソングライターならではのリズム感と言語感覚だろう。かつて名乗っていた「シンガーソングコメディアン」という肩書きは、まさに言い得て妙だ。
「うざい」「あけおめ」「メリクリ」が所ジョージによって世間に広まったのも、そのあたりに秘密があるはずだ。「うざい」「あけおめ」「メリクリ」は、どれも元々ある言葉を短縮したもの。そうすることで、軽快なリズム感が生まれ、言葉としての心地良さが生まれた。普段の会話のなかでも重々しくならず、気軽に使える言葉に生まれ変わった。
そう思って改めて注意してみると、所ジョージのトーク自体も簡潔で無駄がない。ある意味、そこでも歌っているかのようだ。代名詞的なフレーズの「すんごいですね~」も、アクセントの付け方や絶妙なリズムの刻みかたが実に音楽的だ。語るように歌い、歌うように語る。それが、所ジョージだけが醸し出すことのできる心地良さに違いない。
音楽をベースにしたカラッとしたポジティブさは、所が深く尊敬するあの植木等にも通じる。まったく崩れない完璧なまでのポジティブさは、ついネガティブになりがちな私たちにとってとりわけ貴重であり、憧れの対象にもなる。そんなポジションにいまいるのは、おそらく所ジョージくらいだろう。

