ホワイトハウスも台湾情勢を注視

台湾をめぐる緊張はここ50年で最高レベルに達し、米国の外交関係のメディアで台湾の文字を見ない日はない。

2024年10月、筆者は米国、日本、インド、豪州から約10名の若手中国研究者が集まるワークショップに参加した。数日間にわたり、米中競争の行方とインド太平洋地域秩序の再構築について熱い議論が交わされた。

その成果を報告書としてまとめた筆者らはホワイトハウスを訪れ、国家安全保障会議(NSC)の中国担当の政策立案者らと意見交換を行った。

会議が始まるやいなや、彼らが発した質問はただ一言――「それで、台湾はどうなる?」だった。

その瞬間、米中対立の抽象的な議論が、現実の政策の最前線にあることを痛感した。

なぜ台湾はそれほど敏感な問題なのか?

北京とワシントンは台湾をまったく異なる観点から捉えている。

中国にとって、台湾を支配下に置くことは、中国共産党の正統性にかかわる国家の核心的な使命だ。中国共産党の歴代指導者は一貫して「平和的統一」と「一国二制度」を掲げ、台湾を「不可分の領土」とする基本的立場を維持してきた。

台湾、台北の蒋介石記念庭園
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鄧小平とうしょうへいが中国最高指導者を務めた1980年代以降、台湾に対しては武力統一を最終手段としつつも、まずは経済的・人的交流を通じて台湾社会を中国本土に引き寄せる「統戦(統一戦線)工作」が主軸であった。

トップが習近平になっての変化

習近平しゅうきんぺいはこれまでの方針を踏襲しながらも、より明確で強硬な姿勢をとっている。

これまでの他の指導者と異なり、習近平は台湾統一の問題を「無期限の課題」とせず、「民族復興(中華民族の偉大な復興)」の一環として、中華人民共和国建国100周年の節目となる2049年までに実現すべき国家目標の1つに位置づけている。

武力による統一の放棄を否定し、実際に中国人民解放軍による軍事演習や台湾周辺での威嚇いかく行動を常態化させている。2027までに台湾侵攻能力を整えるとの推測も多く、軍事的圧力は習政権下で質的にも量的にも大きく変化している。

一方、米国とその同盟国は、台湾が現状のステータスを維持することが地域のパワーバランスと民主主義の価値の防衛に不可欠だと考えている。

台湾は約2300万人の人口をようする活気ある事実上の民主主義国家に発展し、九州沖から沖縄、台湾、フィリピンを結び南シナ海へと至る西太平洋防衛上の概念である「第一列島線」の中央に位置する地政学的な要衝である。台湾が事実上の独立を維持すれば、中国が独自に人民解放軍を台湾に展開することはできず、よって中国の太平洋への軍事的影響力を制限することができる。